10代はiPodよりウォークマン!?

「BCNランキング」による携帯オーディオプレーヤーのメーカー別販売台数シェアで、2010年12月、ソニーは月次・週次集計ともに1位を獲得したそうだ。

> 出典元 BCNランキング

iPodがポータブルオーディオのデファクトになっていると思われがちだが、実はソニーも健闘している。
そしてMP3プレーヤー黎明期は、iRiverやGIGABEATなど各メーカーからMP3プレーヤーが販売されていたが、現在はアップルとソニーの一騎打ちになっているのが分かる。

ソニーがトップシェアを獲得した背景には、iPod所有者がiPhoneを保有することでiPodを買い替える必要が無くなったからだとも考えられるが、調べてみると別の要因が見えてくる。

まず特筆すべきは、低価格モデルではソニーの人気が圧倒的であるということ。
> 出典元 AV Watch

15,000円未満モデルのシェア推移

15,000円〜25,000円モデルのシェア推移

25,000円以上モデルのシェア推移

上の表の通り、1万5,000円未満ではソニーが66.1%、アップルが26.0%とウォークマンが圧倒している。
ここから推測できることは、サラリーマンなど金銭的に余裕のある層はアップルを購入し、学生など金銭的に余裕の無い層がソニーを購入しているのではないかということ。
実際ソニーのウォークマンは広い価格帯でラインナプされているが、アップルに比べて平均単価が低く、低価格モデルの人気が高いようだ。

さらに調べてみると、ソニーが搭載している、音楽の進行にあわせて歌詞を自動的にスクロール表示する歌詞表示機能「歌詞ピタ」が若者に受けているというのだ。
ソニーによると、昨年発売したウォークマンSシリーズ購入者のうち、購入重視ポイントとして歌詞表示機能をあげた人は21.3%。これを10代だけに絞り込んでみると32.4%と一気に比率が跳ね上がっているとのこと。（参照記事）

CDを買わない世代にとって、レンタルやダウンロードだと手元に歌詞カードが残らないので、この機能が重宝されているらしい。
また歌詞を見ながらカラオケを手軽に楽しむことができるカラオケモードも好評のようだ。
これはいつの時代もリスナーにとって変わらないニーズなのだということを思い知らされる。

また、ウォークマンはPCが無くてもCDプレーヤーから音楽を直接録音できるという点も見逃せない。
日本ではアップルをはじめとする音楽配信は低迷しており、ポータブルオーディオの音源の多くはレンタルCDである。
そして、学生がまだ自分専用のパソコンを持っていない場合が多いことを考えると、ウォークマンの方が使い勝手が良いのである。
さらに自分専用のコンポやCDラジカセを持つのが一般的だった頃とは異なり、CDを購入しなくなった若年層が自宅で音楽鑑賞するためのオーディオプレーヤーを保有していないためか、付属のスピーカーでイヤホンを装着せずに音楽を聴けるという点も響いているようだ。

10代の若者にとってはアップルの先進性よりも使い勝手や金額が重要で、見事にソニーはコミットしてきたのだ。

一方で、新垣結衣、YUI、清水翔太、JASMINEなどを起用した「Play You.キャンペーン」も後押しをしている。
10代の男女にターゲットを絞ったことで、分散せず集中してアプローチをかけることができているからだ。
ターゲットを10代にするというのは、かなり思い切った戦略に思えるが、その裏には別の狙いがある。
ソニーは、若い時に使った思い入れのある製品の存在こそが、将来のファンを生むと言っている。
ソニーブランドの中でウォークマンは若年層に直接訴求できる数少ない製品のひとつであり、若者層に将来のソニーファンになってもらうための最初のソニー製品としてウォークマンをプレゼンしているというのだ。
この明確なビジョンで展開されたマーケティングが、徐々に成果を上げ始めてきたということなのだろう。

iPodのセンセーショナルな登場を知っている世代からすると、ウォークマンは一昔前の商品だと感じてしまう。
またソニーにブランドパワーを感じていたのは過去の事で、今や家の中を見回してもソニー製品がすぐに見当たらない。
でもソニー製品に囲まれて育ってきた我々はソニーの凋落に嘆きつつも、どこかで復活を期待している。
ウォークマンで獲得した若いソニーファンを離反させないためにも、心を掴む製品の開発を望みたい。