2010年10月17日日曜日

【BOOK REVIEW】ウェブで学ぶ

ウェブで学ぶ (著)梅田望夫 飯吉透



マサチューセッツ工科大学(MIT)による「講義で使うスライドや講義メモ」「試験と回答」「講義を録画した映像」などを無償公開するオープンコースウェア(OCW)構想が2001年に発表されたことから始まり、今ではインターネットにつながっていれば、世界中の誰もがウェブ内にある教材を駆使して自由に学ぶことができ、知の宝庫として活用ができる。


そのインターネット内での「学びと教え」を巡るムーブメントはオープンエデュケーションと呼ばれ、本書ではその素晴らしさの紹介に併せ、後半2/3ページは著者2人による対談形式でオープンエデュケーションの現在と未来について洞察されている。

オープンエデュケーションは、「学ぶ機会」「学ぶために必要な助け」を世界中の全ての人たちのために最大限増やしていこうという「21世紀の壮大な教育イノベーション」としている。
またそれは知の宝庫としてウェブを活用するだけではなく、ウェブ上のコミュニティにて自分と志向性を同じくする人々とかなりの確率で出会えることも大切な役割だという。

また梅田氏は、運や巡り会いによって人生が転がっていくが、運や偶然をつかむ秘訣は誰かの心に印象を残して大切な時に誘われる能力であり、ただ勉強しているとか考えているとかではなく、実践的なプロジェクトに関わって人とつながっていくことが重要であるとし、それがウェブのコミュニティではできると述べている。

そもそもオープンエデュケーションというワードは知らなくてもウェブで学べることの素晴らしさについては周知のことである。
しかし、個人レベルでオープンエデュケーションの恩恵を受けるには、それらを知って活用できる情報リテラシーやITリテラシーはもちろんのこと、強い意欲や、積極的かつ継続的な発信と受信が必要になってくる。
これは、できそうでなかなかできないというのが実感である。

また、オープンエデュケーションは現在英語圏で行われているのがほとんどである。
本書でも触れられているが、英語で学ぶために英語を学ばなければならないという状況なのだ。
これは正直ハードルが高い。
個人的希望としては、インターネットが「時間」と「場所」を超越して人と人をつなげてきたのだから、今後は「言語」も超越してほしいところ。
今でも翻訳機能はあるが、まだまだ精度も使い勝手も悪い。
十数年後には、ウェブ上で発信する言語が何であれ、ユーザーインターフェース上で自身が理解できる言語に同時通訳できていてほしい。

それにしても本書で書かれているオープンエデュケーションの概観から、教育イノベーションに期待がふくらむと同時に、情報格差に対する不安も広がる。
日本の教育制度も近い将来大きな転換を迎えるのかも知れない。


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