2010年6月20日日曜日

【BOOK REVIEW】iPadショック

iPadショック (著)林伸行



「私たちの日常風景の中に、これまでになかった日常を呼び込む道具-まさに未来への入り口と言えるだろう。」

これは本書の「まえがき」からの抜粋である。
それほどまでにiPadは革命的なのか。
iPadはiPhoneと比べて何が優れているのか。
そしてiPadはどのような市場や業界を変革していくのか。
これらiPadのポテンシャルについて、ITジャーナリストの著者が分かりやすく紹介している。

iPadはkindleのように電子書籍に特化していない汎用型デバイスであることがうけている。
appleのジョブズCEOは、「Webブラウジング」「メール」「写真」「動画」「音楽」「ゲーム」「電子書籍」の7つをキーポイントとしている。
だが、やはり「電子書籍」がiPad普及に向けての重要なコンテンツになる事は間違いない。
iPhoneは画面が小さいため、新聞や書籍などはユーザーインターフェースをカスタマイズする必要があり、余計な手間とコストが発生するため気軽な配信は行えなかったが、iPadであれば実際の出版物と同じものを配信すれば良いので、配信のハードルは大きく下がり参入しやすくなるからだ。

ただ、実際に電子出版物をiPadで見て思う事は重いという事。
日本では主に3G回線であること、さらには画面が大きくなる事で、iPhoneでは感じなかったストレスを感じるのだ。
本書に書かれているポテンシャルは十分に感じつつも、日本が出遅れている出版業界の対応、インターネット回線の対応が望まれる。

また本書で興味深かったのは、日本のキャリアとappleの関係について。
実は日本だけiPadにSIMロックがかかっている。
当初ドコモはiPad用にSIMを提供すると宣言したはずだし、appleにしてもSIMフリーの方が拡販につながるのにだ。
著者はこの原因の一つにドコモの社長の軽率な発言を挙げている。
appleは秘密保持に厳格であるため、ドコモがメディアに情報をリークしながら、話題や世論をつくりあげようとした事に対して、嫌悪感を感じたのではないかという。
日本ではキャリアが絶大的な権力を持っているため、ドコモに文句を言うメーカーは無いのだろうが、今後SIMフリーになり、またメーカーがキャリアを選ぶ時代になれば、このようなドコモの王様的態度は改めなければならないだろう。

現在、ITを中心として多くのサイトやブログでは、iPadを褒めちぎっている記事ばかりだが、アルファブロガーの藤沢氏の金融日記のエントリー「iPadはとても残念なプロダクト」では、iPadの期待は過大だとしているので、参考までに紹介しておきたい。
「魔法のようだったのはiPadではなく、スティーブ・ジョブズやソフトバンクの孫さんのマーケティング戦略やプレゼンテーションの方だったのかもしれませんね。」
という締めコメントはなかなか言い得て妙である。


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