ユニクロ進化論 (著)松下久美
WWDジャパン編集部デスクの著者が、ユニクロ柳井氏をはじめとするユニクロ幹部への長年に渡るインタビューを元に、ユニクロの成長の源を紐解いた一冊。
著者による分析や見解といったマーケティング本ではなく、インタビューを基にした事実をまとめているので、ユニクロの成長が内部視点から分かりやすく理解できる。
例えば、メディアで頻繁に報じられる柳内氏の経営手腕や人となりはもちろんのこと、周囲にいる幹部の功績、SPAによる小売革新や大型M&A、ブランド戦略、人材戦略などの事実を掘り下げる事無くそのまま伝えている。
ユニクロという会社の概要がこの一冊で理解できるが、逆を言うと、ユニクロの舞台裏を知り得るだけの本とも言える。
この本では、良い事ずくめの成長企業に見えるユニクロも、海外事業の停滞や人材の出入りの激しさなどの課題もあるという。
ちなみに、一時期話題になったドバイ投資会社と買収合戦になったバーニーズニューヨークのM&Aは、最終的に断念したわけだが、リーマンショックや急激な円高情勢になった今、買収していたらユニクロは大赤字になった可能性もあったというのだから、運も味方につけているとも言える。
また、著者はポストユニクロとして、しまむらや無印良品に続き、ローリーズファームを展開するポイント社、アース・ミュージック&エコロジーを展開するクロスカンパニーの2社を挙げており、この2社の今後に要注目である。
最後に本書で気になった一文をメモしておく。
それはユニクロではなく、現在最も台頭しているファッションビルであるルミネの会長の言葉だ。
「これまで店頭の販売スタッフは、コストだと考えられてきた。しかし販売スタッフこそ、お客様に自分達の商品や価値、ブランドメッセージを伝える重要な役割を担っており、収益の源である。店舗で働くスタッフを磨き続ける事が成長につながる」
よく従業員全員が経営者視点を持てと言われるが、経営者は会社を、現場はお客様を見る事が最重要であり、現場が会社を見始めたら成長は止まってしまうのではないのだろうか。
不景気だからこそ、出納や机上の戦略よりも、企業の財産である人の成長が企業の発展につながることを再認識するべきなのだろう。
その上で、ルミネ会長の言葉は戒めにもなる。
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