2010年4月3日土曜日

【BOOK REVIEW】スポーツビジネス・マジック

スポーツビジネス・マジック (著)小林淑一



スポーツマーケティング戦略における実践的な活動であるスポーツビジネスの入門書。

スポーツコンテンツがどうビジネスとして成り立ってきたか、大会や競技の変遷、主要競技におけるビジネス面の現状と課題などが丁寧に説明されている。

本書ではオリンピックやワールドカップ(世界大会)における、チケットやグッズの販売、放映権、スポンサーからの収益やその使い道が具体的な費用とともに記述されており、スポーツビジネスの裏側をのぞくこともできる。

最も興味深かったのは、スポーツイベントの放送権(放映権ではない)についてだ。
サッカーや野球などの多くのスポーツ競技自体は、原則として著作物とはならないため、著作権法上の公衆送信権は認められていない。
またテレビ放送権を定める規定は日本法にはないため、スポーツイベント自体について放送権が存するか否かについて法令上の根拠は無いそうだ。
肖像権についても、イベント自体は公衆的であり、プライバシーの侵害には当たらないため、商用利用さえしなければ基本的には違法にはならない場合が多い。

要するにUsteramなどで個人的に生中継を行っても、それを著作権的に違法とする具体的な法令はないということになる。
これは音楽イベントとは大きく異なる点だ。
動画配信が容易にできる今、これは放映権販売というビジネススキームの脅威であり、今後大きな課題になってくるだろう。

またラグビーの項目では、日本で開催される2019年のワールドカップについても触れられていた。
ラグビーワールドカップは観客動員数240万人、テレビ視聴者数40億人にのぼり、FIFAワールドカップ、オリンピックに次いで世界3番目に大きなスポーツイベントになるそうだ。
日本のラグビーシーンを考えると驚きである。
主催者であるIRBにとってもラグビー後進国で行う初めてのチャレンジとなり、課題が山積みだろうが、日本でのラグビー普及も踏まえて、是非盛り上がってほしいところである。

日本ではラグビーを始め、プロ化されていない競技は存続や活動の継続には様々な障害がある。
オリンピック選手でさえ、スポンサーや国からの支援に苦慮し、思うような活動ができない場合も多い。
例えば、アイスホッケー、スケート、トランポリン、ラクロスなどが挙げられる。

世界的にも、プロ化されている競技や、用具に費用が掛からないランニング競技などのみ、経済的に貧しい国の選手も活躍できている。
冬季オリンピックに発展途上国が少ないのは、相対的に雪や氷の無い場所に貧しい国が多いこともあるが、活動や用具に多額の費用が発生する競技が多いということも忘れてはならない。

選手も練習だけに打ち込むと言うオールドスタイルでは、競技自体継続できないということが分かる。
スポーツマーケティングとして、競技に注目とお金を集めるスキームを構築していく企業や人材が、これからの時代必要になってくることがうかがえる。


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