インビクタス (著)ジョン カーリン
胸が熱くなった。感動した。そして涙が出た。
映画インビクタスの原作である本書は、当然ながら映画に収まらない内容も多く、映画以上に胸を打つ。
当時のアパルトヘイトのディテールと、マンデラ元大統領の偉業、そしてラグビー南ア代表スプリングボクスの求心力について、多くのインタビューを元に描かれている。
マンデラ氏が大統領に就任するまでの南アフリカの実情はあまりにも悲惨である。
アパルトヘイトによる抑制はもちろんだが、対立する人種への暴力、殺害が当然のように意識付けされてしまっていたことに驚く。
クレヨンしんちゃんの一節に「正義の反対は悪じゃなく、また別の正義」という言葉があるそうだ。
まさしく、お互いに正義だと信じているがそれは同じ正義ではなかったのだ。
その中、マンデラ氏は普通の人間の概念や精神を超越し、お互いをよく知り、許し、対話することで解決に向かう。
国家反逆罪として20年以上に渡り刑務所に放り込まれたのにも係らず、黒人を弾圧してきた多くの白人に対して立ち向かうのではなく、民族和解・協調を呼びかけ一つの国家国民として融和させることで対立の解消を図った姿に、感銘を受けないわけが無い。
またマンデラ氏は非常に策士だったことも分かる。
融和政策の一つとして、国技でありアパルトヘイトの象徴であったラグビーを利用することも計画的である。
ただ、当時圧倒的な強さを誇っていたオールブラックスを破り優勝したことは奇跡に他ならない。
これは、南ア国民全員の想いと、「優勝が国家融和におけるターニングポイント」だという重要性を感じていた選手の執念がそうさせたのだろう。
また、マンデラ氏が試合前日の練習場、試合直前のロッカールームに足を運び、選手を激励したことが選手を大きく奮い立たせ「この人のために勝たなければいけない」と選手内で断固たる決意が生まれたそうだ。
本書にて、1995年のワールドカップでの優勝が、南アにとって歴史的に価値のある勝利だったということを深く認識させられた。
ちなみに、決勝戦のハイライトがYouTubeにUPされていた。
キャプテンのフランソワ・ピナールは、この試合の大きなポイントの一つとして、チームで最も小柄の一人であるスクラムハーフ(9番)の選手が、大会中に獅子奮迅の活躍をしていたオールブラックスのロムー選手に対して、果敢にタックルにいって倒したことを挙げている。
確かにこれでチームの士気をが上がらないわけが無い。
そしてこちらは、試合終了後のスタジアムの様子。
アパルトヘイトが廃止になり新しくなった6色の国旗がはためいている姿に感動する。
なお現在南アでは、黒人間の貧富の差は広がり貧困層はアパルトヘイト時代の倍になっており、犯罪率の高まりやエイズ蔓延など、社会的な課題を多く抱えている。
このようなアフリカの問題に対して、意識を向ける上でも本書は有益である。
またUNICEFでは、「世系による差別」をカーストとし、これが存在する国として、アジアの国々(インド・スリランカ・バングラディッシュ・日本)とアフリカを挙げている。(参照:wikipedia)
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