テレビが言えない地デジの正体 (著)たくきよしみつ
アナログテレビで不自由していないのに、どうして地デジに移行しなければならないのか?地デジは素晴らしいのか?今より不便になる面はないのか?など、メディアでは報じられない総務省やテレビ局の諸事情を踏まえ、「地デジ」の正体を解説している。
本書では視聴者に加え、地方テレビ局や製造メーカーも混迷し被害者であると指摘している。
その中で興味深いのは、携帯電話ユーザーが電波利用料の多くを負担している点。
電波は使用できる帯域に限りがあるため、利用は国による免許制となっており、参入障壁が高く、電波を使用できるテレビ局などは大きな利権に守られている。
そして電波は国の資産として有料化され、テレビ局など電波を利用している企業や団体は、国に電波利用料を支払っており、2007年度の電波利用料は総額約650億円にのぼる。
その電波利用料は、総合無線局監理システムや電波監理システムの整備・運用、周波数逼迫対策のための技術試験事務、携帯電話の過疎地での基地局維持・設置などに使用されているようだが、最も投資されているのは地デジ移行関連の業務で約200億円も割かれている。
問題は、国に支払われている電波利用料の内、携帯電話会社が約80%にのぼり、全国のテレビ・ラジオ局が支払っているのは5%程度でしかないこと。
要するに、地デジ移行の莫大な費用を、テレビ局ではなく携帯電話ユーザーが負担しているのだ。
テレビ局は携帯電話の1.4倍の広い帯域を占有していながら、非効率な使い方をしている上に、政治的な力を働かせ電波利用料を極力低く抑えている。
電波は国の保有なので、電波による恩恵は国民が等しく享受できる権利を持ち、監理している総務省は当然税金にて運営されている。
にもかかわらず、電波を利用して利益を生んでいる企業よりも、携帯電話を使用している国民の方が利用料を多く支払っているのは、二重搾取とも受け取れ、理解し難い。
このスキームはテレビ局の利権加担とも捉える事ができ、歪んでいるとしか思えない。
また著者は地デジ対応テレビを購入する際のチェックポイントとして以下の5つを挙げている。
・BSデジタルチューナー無しのモデルでもいいのか?
・テレビに録画機能がついているか?
・録画可能モデルであればチューナーを複数搭載しているか?
・解像度はフルハイビジョンが必要か?
・アクトビラなどの新しいメディアに対応しているか?
特に録画機能については、B-CASカードの問題もあり特に重要用だと指摘している。
本書はかなり詳細に地デジのデメリットを紹介しているが、著者の感情的な批判も多く、一面的な見解になっているのが残念だった。
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