リクルート事件・江副浩正の真実 (著)江副浩正
リクルート事件の主役、元リクルート会長江副氏による回顧録。
事件の全貌、取調べや裁判の模様、当時の心境が赤裸々に綴られている。
堀江氏「徹底抗戦」の告白でも衝撃を受けたが、リクルート事件の検察の立件方法は更に震えた。
検事正を中心とした検察の会議で決定した方針は絶対で、容疑者は辛い拘留生活と厳しい取調べの中、真実に関係なく検察のシナリオが描かれた調書に署名させられる事になる。
そしてその調書で裁判の結果は大きく左右される。
やってもいない罪を認めることで、長く辛い拘留生活からの解放、それは自由と引き換えの罪であり、これが有罪率99.8%の日本の司法の背景である。
日本の司法システムで、正しい事を貫くことの難しさを改めて痛感した。
そして同時に第三の権力と言われるメディアも恐ろしいことが分かる。
マスメディアによる情報操作で世論が形成されれば、検察や裁判官もその世論に応える必要が出てきてしまうからだ。
マスメディアは、社会的制裁に加え司法にも大きく影響を及ぼすことから、今後はインターネットが、いかにマスメディアによるバイアスを是正できるかが重要になると思われる。
また驚いた事に、リクルート裁判では、株や投資についての知識や実体験の無い裁判官や検察が、裁判を担当している。
殺人とか傷害であれば識者でジャッジできるが、一つの世界を形成し業界慣習の濃い株について、裁判前に資料を勉強しただけの人達が裁けるものなのだろうか。例えば若者の携帯で起きる事件について、携帯電話を電話としてしか使用していない昭和前半に生まれ育った人が感覚的にわかる訳ないし、実体験しなければ裁くことなんかできないと思う。
これも司法システムの弊害の一つだと思われる。
判決が出るまで13年という長い月日、そして政界や社会を巻き込んでの裁判は、江副氏にとって本当に苛酷だっただろう。
この体験を綴った本書が、司法のシステムや検察の在り方を世論で問われる事を望みたい。
そして我々も、司法の結論やメディアの情報を疑う事が必要なのかもしれない。
堀江氏の「徹底抗戦」同様、検察や司法の在り方を問う内容になっており、栽培員制度が始まった今、読んでおきたい一冊である。
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