右であれ左であれ、わか祖国日本 (著)船曳建夫
タイトルが過激にも思われるが、本書は右翼や左翼などの観念(イデオロギー)や、愛国心の是非などではない。
著者は、イデオロギー論争ではなく、祖国の歴史を分析しながら国家を論じる事の重要性を指摘し、本書では「国際日本」「大日本」「小日本」という地政学的発想から三つのモデル、さらには「中国」「ロシア」「西洋」の三つの主勢力という枠組みから国家を論じている。
「国際日本」をキリスト教を理解し貿易を活発化するなど国際協調した織田信長モデル、「大日本」をキリスト教弾圧や朝鮮出兵し自国を主軸として外地に支配を広げようとした豊臣秀吉モデル、「小日本」を宗教の徹底管理や鎖国により内向きに力を大きくした徳川家康モデルとして、区別している。
そして織田信長、豊臣秀吉、徳川家康による国家戦略の大きな移り変わり、さらに江戸時代の「小日本」から、日露戦争・日清戦争による「大日本」へ、そして第二次世界大戦の敗戦から「国際日本」への変遷など非常に興味深い解説となっている。
また「国際日本」を目指すも、日米安保条約とセットにされた憲法9条を背景にしたアメリカとの外交に偏り、アジアや西洋との外交は儀礼的で国際的に対等な関係が図れず、国家が彷徨っているといった点も見逃せない。
本書は、北朝鮮問題や中国とのつき合い方など、今後世界とどのように向き合っていけばよいのかを考えるための、一助となるのではないだろうか。
ちなみに、日本の歴史教育では近代の日本について深く学べないと言う欠陥があるようだ。
社会科の中で高校以降選択科目になってしまう「日本史」は選ぶ人が少なく、さらに過去から遡る授業形態のため近代になるほど学期末の関係により端折られてしまうからだ。
さらに戦争や世界との関わりがイデオロギーに触れてしまうため教師も具体的に教えることができないという側面もあるらしい。
卑弥呼に聖徳太子、中臣鎌足や中大兄皇子、さらには足利や藤原など、日本の歴史を振り返り成り立ちを学ぶ事も必要だが、現実的な問題として、近代における日本の行動や立場を深く検証することの方がはるかに意義があるのではないかと思うのは私だけだろうか。
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