世襲議員のからくり (著)上杉隆
タイトルの通り、日本の政治家に世襲議員が溢れていることを指摘し、理由と裏側に迫り政界のグレーゾーンを糾弾している。
日本の政治家のうち、自民党はおよそ40%、民主党では20%程度が世襲議員だと言う。
アメリカの全議員に占める世襲議員の割合が5%程度だということを考えると異常な割合だ。
世襲議員の特権はもちろん「地盤」「看板」「カバン」の三バンを引き継げることにある。
驚いたのは「カバン」と言われる政治資金が非課税で親から子供へ相続できると言う点だ。
多くの富裕層は相続税で大きな悩みを抱え、相続対策するために大変な労力を要する。
土地や家や自社株に含み益のある自営業者やオーナー企業は、相続税の支払に悩み自殺や親族同士の紛争が発生したり、長年続いてきた店をたたむことなども珍しくはない。
しかし、政治家は後援会などの政治団体間への寄付などを通して、無税で莫大な資金を子の政治資金へと移行することができるのだから不公平極まりない。
例えば、小渕元首相の娘である小渕優子氏はTBSに勤めていた普通のOLだったが、政界進出のためにTBSを辞め選挙に出馬。
その小渕優子氏の政治資金は、政治団体を経由し父から1億2000万円をなんと無税で相続しているそうだ。
一般人が政界進出を狙っても、到底1億2000万円の資金を準備することはできない。
1億2000万円の政治資金に加え、後援会組織なども継承して出馬しているのだから当選して当然である。
世襲議員が有利であることは一目瞭然で、一般人が政界に参画するのには大きなハードルがあることは否めない。
また世襲議員は地盤も引き継いでいるため、東京で育っているのにもかかわらず、親の地盤である地方の選挙区で立候補することになる。
愛着のない親の出身地に、選挙の時だけ出向き我が物顔で応援を呼びかける。
そこには自身の友人も恩師もいないのだ。
本来国の仕事に集中すべきはずである国会議員が、地元有権者へのアピールのために、公共事業を名目にお金を落としたり、陳情を受けて取り計らったりしていることがほとんどだ。
郷土のために政治家として役に立ちたいのであれば、知事や町長、都道府県議員や市町村議員になればよいという上杉氏の意見には頷けてしまう。
もちろん世襲議員が悪いわけではなく、仕組みが悪いということを著者も指摘している。
親の姿を見て親と一緒の職業に就きたいという家はどこにでもある。
特に日本では子供に自身の仕事を継がせることをゴールとしている事業者も多く、それが伝統をつくってきた場合もある。
しかしその閉鎖感が、新しくその道にチャレンジする人達を妨げたり、敷居を高くすることに寄与しているのであれば、それは取り外すべきである。
不公平と言うのはもちろんだが、その職業に新しい息吹が吹き込まれず、革新や発展の可能性が減ってしまうからだ。
世襲議員が多い国会議員は、現状から不利になるような仕組みをつくることは難しいだろうが、世襲議員だと後ろ指さされないためにも、真の政治家として仕組みを改善してほしいところ。
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