幼い頃から飲み続け、今でも週に2〜3ℓは消費している身近な牛乳を「黒い牛乳」とうたったタイトルに衝撃を受け購入。
本書は、水よりも安価になった牛乳生産の真実と酪農家の苦しみ、そして消費者の誤解を明らかにし、今後の酪農の解決を提示している。
著者は長年酪農に携わっているため、現実味を帯びた深刻な事実が語られている。
まずは牛乳の種類について整理しておこう。
パッケージの表示が「牛乳」「特別牛乳」「成分調整牛乳」「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」は生乳100%を原料につくられている「牛乳」だ。
「加工乳」は生乳や牛乳を原料として製造された乳製品を用いて成分を調整加工した牛乳由来の飲料となる。
また「乳飲料」は乳製品を主要原料として3.0%以下の乳固形分が含まれている飲料で、果汁や甘味料などを添加した「コーヒー牛乳」や「フルーツ牛乳」がこれにあたる。
現在は乳飲料に「牛乳」の商標を使用できなくなったため、「コーヒー牛乳」や「フルーツ牛乳」の名称は無いらしい。
さて肝心の「牛乳」だが、濃い牛乳を「おいしい牛乳、栄養価の高い牛乳」だとする消費者の誤解した風潮も手伝い、20年ほど前に全国農業組合と乳業メーカーの独自の基準により、乳脂肪分3.5%以上の生産を酪農家に通達。
なんとそれにより、基準を下回る乳脂肪分の場合、半値でしか買い取ってくれないようになる。
通常放牧されている牛の乳脂肪分は3.0〜3.5%程度。
特に冬は夏に採取して乾かした干し草を餌にするため脂肪分が減る。
ということは、放牧酪農では生活できなくなってしまう。
そこで多くの酪農家は自身が生活していくために、餌として栄養価の高い穀物を牛舎で与え続け、乳脂肪分の高い牛乳をつくりだす工業的酪農となる。
これは、牛は一生牛舎で過ごす事を意味し、広大な放牧地がある北海道でも同様だ。
穀物飼料のみを与えられた牛は高栄養高カロリーの摂取で乳脂肪分の高い牛乳を出すが、それは人間で言うと典型的な生活習慣病であり、消化障害により薬剤が使われる事もあると言う。
ということは、放牧酪農では生活できなくなってしまう。
そこで多くの酪農家は自身が生活していくために、餌として栄養価の高い穀物を牛舎で与え続け、乳脂肪分の高い牛乳をつくりだす工業的酪農となる。
これは、牛は一生牛舎で過ごす事を意味し、広大な放牧地がある北海道でも同様だ。
穀物飼料のみを与えられた牛は高栄養高カロリーの摂取で乳脂肪分の高い牛乳を出すが、それは人間で言うと典型的な生活習慣病であり、消化障害により薬剤が使われる事もあると言う。
青空の下を歩く事も許されず、ひたすら牛乳を生産するためのマシンにさせられているわけだ。
これがタイトルにある乳業メーカーや農協などの都合でつくられた「濃い牛乳=黒い牛乳」である。
一方、政府の企みも見え隠れする。
日本はアメリカに対して車や電化製品など多くの製造品を輸出しており、それが経済を潤わしていたのは、最近の輸出企業の低迷による日本経済の停滞をみれば分かる。
裏を返せば、見返りにアメリカから多くの輸入を迫られているわけで、その一つがトウモロコシや小麦などの穀物なのである。
政府は穀物を大量輸入しなければならない政治的理由から、牛の餌を全て輸入用の穀物にすることは好都合だった。
酪農家へは農協を通して補助金(もちろん税金)をちらつかせ、輸入穀物を牛の餌として半ば強制的に買わせたのである。
何故なら多くの酪農家は農協から数千万円の借金をして牧草地や牛舎の機材などを買っているわけで、農協に借金を返済するまでは辞められないし農協に逆らう事も難しい仕組みになっているからだ。
牛乳の場合買い手が強く、酪農家から集められた牛乳は乳業メーカーで混合されて販売されるため、酪農家によって差別化されて世に出る事はほとんど無い。
だから米や野菜とは異なり、質を求めた商品づくり、業務に見合った価格設定、独自の販売チャネルをつくることができず画一的になってしまう。
また、牛や豚はどうしても経済動物として扱われるため、大量生産に向けた効率化と価格競争迫られるコストカットで、機械的な飼育になる。
商品パーケージからは、放牧されて伸び伸び成長した牛から搾りたての牛乳が届いているかのような錯覚を覚えてしまうが、実は一生牛舎で鎖をつけられ穀物を与え続けられた人工的な牛乳になってしまうのである。
なんとも切ない真実ではあるが、本書の奥深い点は、真実を明らかにしつつ、このスキームを打開する方法を提示している事だ。
是非本書を読んで確認してほしい。
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