2009年10月27日火曜日

【BOOK REVIEW】2011年新聞・テレビ消滅

2011年新聞・テレビ消滅 (著)佐々木俊尚



本書は、インターネットの広告費が新聞を抜く日も間近に迫っていること、さらに2011年の地デジ化も加わり、新聞・テレビのビジネススキームは崩壊に向かっていることを提唱している。

まず興味深かったのは、メディア産業はゼロサムゲームという点。
メディア産業が頼っている広告市場は何十年も国内総生産の1%を保っており、国全体の成長率を超えて成長することは一度も起こっていないと言う事。
その一定額の広告費の中で使用されるメディが変化しているということだから、ネットが伸びるほど他のメディアは縮小することは必然と言う事になる。

また2011年の地デジ化にて、ネットへシフトする大きな変化が起きる可能性があると言う。
地デジの電波は直線的で届く範囲が限定的なため、田舎では地デジが受信できない地域が多く出る。
なんと鎌倉市でさえも、海と山に囲まれた独特の地形で中継が届きにくく、さらに古都保存法により中継局が設置できず5,000世帯以上が受信できなくなると言われているそうだ。
解決するためにはNTTの光ファイバーでの送信が考えられるのだが、これが電波法で守られたテレビの聖域を崩しネットに侵略される一歩になるのではないかと指摘している。

そしてメディアの変遷を「コンテンツ」「コンテナ」「コンベヤ」と分けて説明しているのがなかなか分かりやすい。
例えば音楽業界では、以前までの流れは「コンテンツ=楽曲(ミュージシャン)」「コンテナ=レーベルがつくったCD」「コンベヤ=CDショップ」の3階層だったが、今はiTunes革命により、「コンテンツ=楽曲(ミュージシャン)」「コンテナ=iTunes store」「コンベヤ=インターネット」となっている。
「コンテナ」「コンベヤ」ともにプラットホームが変化していることが明確だ。
図式の通り、CDショップとCDを制作するレーベルはシュリンクしていくことが推測されるが、その中avexなどは「コンテナ」から「コンテンツ」側へのシフトチェンジを行っている。
「コンテンツ」側にシフトすれば、今後「コンテナ」「コンベヤ」が移り変わっても生き抜いていける可能性があるからだ。

このように、プラットフォーム戦争は今後激しくなり、ビジネスモデルの大きな変化になってくると著者は予想している。
しかしこれは憂いではなく、今まで電波法で利権を保護されてきたマスメディアの力が弱くなっていくのは望ましい事。
メディアの寡占状態から、多くの企業や個人が競争できる平等な市場に変化するチャンスでもあるこの転換期に期待をしたい。


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