2009年6月20日土曜日

【BOOK REVIEW】運命の人2

運命の人2 (著)山崎豊子



2冊目では、主人公である記者の逮捕そして裁判(第一審)の模様が描かれている。
実際の事件の概要をwikipediaより抜粋。
西山事件 概要(wikipedia参照
佐藤栄作政権下、米ニクソン政権との沖縄返還協定に際し、公式発表では米国が支払うことになっていた地権者に対する土地原状回復費400万ドルを、実際には日本政府が肩代わりして米国に支払うという密約をしているとの情報をつかみ、毎日新聞社政治部の西山太吉が社会党議員に漏洩した。
政府はこれを否定し、逆に情報源の外務省女性事務官が国家公務員法(機密漏洩の罪)、西山が国家公務員法(教唆の罪)で逮捕され、さらに検察が起訴状で西山が情報目当てに既婚の事務官に近づき酒を飲ませた上で性交渉を結んだことを明らかにしたため、報道の自由を盾に取材活動の正当性を主張していた毎日新聞はかえって世論から一斉に倫理的非難を浴びることになった。
裁判においても、起訴理由は「国家機密の漏洩行為」であるため、審理は当然にその手段である機密資料の入手方法、つまり二人の不倫関係に終始し、密約の真相究明は検察側からは行われなかった。
西山が逮捕され、セックススキャンダルとして社会的に注目される中、密約自体の追求は完全に色褪せてしまった。また取材で得た情報をニュースソースを秘匿しないまま国会議員に流し公開し、情報提供者の逮捕を招いたこともジャーナリズムの上で問題となった。
この裁判では、国の威信を守るため裁判でも国家側よりになり公平な裁判が行われなかったとの認識が多数を占めている。
記者側が訴え続けた「知る権利」「報道の自由」については争点にならず、記者がニュースソースである外務省事務官をそそのかした部分ばかりが強調されており、素人の私ですら違和感を感じ得ずにはいられない。

事実、その後大手メディアの政治部が国家機密に関わる事項についてスクープするということが無くなっているそうだ。(リクルート事件などのスクープは社会部。)
なぜならスクープしたら国に復讐されるんだから当然だ。
国側(政治家・官僚)と報道するメディア側が対等関係ではなくなり、メディアは国側のトピックをただ伝言ゲームするだけになってしまったということ。
完全中立であるべきはずのメディアが、国の情報操作に加担してしまっていると言う事に他ならない。

2冊目の本書では判決前までのストーリーだが、裁判の内容や経過についてまでもきちんと突っ込んで描かれ読み応え十分。


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