2009年11月23日月曜日

【BOOK REVIEW】リクルート事件・江副浩正の真実

リクルート事件・江副浩正の真実 (著)江副浩正



リクルート事件の主役、元リクルート会長江副氏による回顧録。
事件の全貌、取調べや裁判の模様、当時の心境が赤裸々に綴られている。

堀江氏「徹底抗戦」の告白でも衝撃を受けたが、リクルート事件の検察の立件方法は更に震えた。
検事正を中心とした検察の会議で決定した方針は絶対で、容疑者は辛い拘留生活と厳しい取調べの中、真実に関係なく検察のシナリオが描かれた調書に署名させられる事になる。
そしてその調書で裁判の結果は大きく左右される。
やってもいない罪を認めることで、長く辛い拘留生活からの解放、それは自由と引き換えの罪であり、これが有罪率99.8%の日本の司法の背景である。
日本の司法システムで、正しい事を貫くことの難しさを改めて痛感した。

そして同時に第三の権力と言われるメディアも恐ろしいことが分かる。
マスメディアによる情報操作で世論が形成されれば、検察や裁判官もその世論に応える必要が出てきてしまうからだ。
マスメディアは、社会的制裁に加え司法にも大きく影響を及ぼすことから、今後はインターネットが、いかにマスメディアによるバイアスを是正できるかが重要になると思われる。

また驚いた事に、リクルート裁判では、株や投資についての知識や実体験の無い裁判官や検察が、裁判を担当している。
殺人とか傷害であれば識者でジャッジできるが、一つの世界を形成し業界慣習の濃い株について、裁判前に資料を勉強しただけの人達が裁けるものなのだろうか。
例えば若者の携帯で起きる事件について、携帯電話を電話としてしか使用していない昭和前半に生まれ育った人が感覚的にわかる訳ないし、実体験しなければ裁くことなんかできないと思う。
これも司法システムの弊害の一つだと思われる。

判決が出るまで13年という長い月日、そして政界や社会を巻き込んでの裁判は、江副氏にとって本当に苛酷だっただろう。
この体験を綴った本書が、司法のシステムや検察の在り方を世論で問われる事を望みたい。
そして我々も、司法の結論やメディアの情報を疑う事が必要なのかもしれない。

堀江氏の「徹底抗戦」同様、検察や司法の在り方を問う内容になっており、栽培員制度が始まった今、読んでおきたい一冊である。

2009年11月21日土曜日

【BOOK REVIEW】M&A新世紀

M&A新世紀 (著)岩崎日出俊



現在の世界情勢を踏まえたM&Aの実態や考え方を分かりやすく解説している。
本書を読み終えると、国内経済ばかりに目を向けて気づきにくい「日本企業が世界から取り残されている」ということが浮き彫りになってくる。

世界経済を見回すと、企業価値の向上を目的として行われるM&Aはステークホルダーに対して有益に働いていることがわかる。
TOBの本質は、その企業のオーナーでもある既存株主がメリットを感じて賛成した結果、成立するからだ。
しかし日本では、「M&A」というと、過熱報道により一人歩きした「敵対買収」がまず最初に浮かぶため、あまり良いイメージは無い。

例えば、一時期話題になったスティールパートナーズによるブルドックソース買収計画は、メディアの報道からか世論はスティールパートナーズをお金至上主義のハゲタカだと敵対視した。
そのため、買収防衛策訴求時にブルドック経営陣は「スティールはブルドックの企業価値、株主の利益を毀損する」と主張し、世論を巻き込んだ買収防衛策を株主に訴え、結果スティールは排除された。
しかし、今となっては経営陣による事業計画のミスリードにより株価は低迷し、経営陣の方が株主を毀損した形になっている。
そもそも、ブルドック経営陣が効果的な経営を行えていなかったから、スティールは企業価値向上を目論みM&Aを仕掛けており、本来M&Aにより株主のメリットは高まるはずだったが、当時の株主は世論と経営陣の情に流されてしまったため大損してしまったのだ。

また、M&Aの失敗例としてはNTTドコモが挙げられている。
1999年〜2002年にかけて、なんと約1兆9,000億円を海外の携帯電話会社へ投資し、その後1兆6,000億円の評価損を出している。
これは日本で徴収されている消費税の約1/10、年間の携帯電話収入の約45%にあたる莫大な金額である。
NTTドコモのM&A戦略は、シナジーや経営参加による企業力向上が目的ではなく、自社の技術を世界に広めるために行われたもので、これこそ金で世界を取り込もうとしているハゲタカ行為である。
一般の企業だったら倒産している損失を計上しても、様々な面で国から守られているNTTドコモは悠然としている事にただ唖然とするばかりである。

本書を読んでいく中で懸念されるのは、日本企業の株式持ち合い制度で発生する企業努力の怠慢である。
旧来の日本企業は関係会社や銀行などで株式を持ち合っているため、グローバル企業に比べ、経営に対する株主からのプレッシャーや、M&Aにさらされる危機感が圧倒的に低い。
企業の拡大と存続を狙いM&Aが世界で繰り広げられている中、旧来の日本企業の世界的シェアや時価総額は相対的に下がっており、世界から取り残されてしまうのも時間の問題だと強く感じた。

本年話題になっているキリンとサントリーの統合も、世界の中で5%程度の規模しかない日本のビールメーカーが世界で戦える力が弱いこと、そして時価総額の低さから海外のビールメーカーや投資ファンドからのM&Aの危機にさらされ続けていることなどから、必然の選択だと著者は指摘している。
これは、世界の中で相対的に経済力が高く、日本で首位争いをしていれば世界で戦える水準に達していた時代は過ぎさったことを示唆している一例なのではないだろうか。

2009年11月19日木曜日

CDのプライベートブランドは成功するのか

「TSUTAYA」もPB展開、レコード会社と合同で999円CDを60作発売

記事によると、TSUTAYAがユニバーサルミュージックと先日事業売却でニュースになったビクターエンタテインメントと組んでプライベートブランド(PB)の自主企画CDを発売するとのこと。
第1弾ではカーペンターズやスティービー・ワンダーなど洋楽アーティストのベスト盤60タイトルが1枚999円で発売されるそうだ。
輸入盤でも安くて1,500円位だから、相当お買い得感がある。

メーカー側は「TSUTAYA独占で販売することにより、近年レコードメーカーが直面している初回出荷数の低迷を解決、全国津々浦々への商品提供の強化を実現しました。レコードメーカーと小売がお互いの課題を一緒に解決することによって、エンターテイメント業界全体の強化、そして、幅広い年齢層の購買力の強化と集客力アップを図ることも可能になります」と説明している。
また今後は、邦楽アーティストでのTSUTAYA独占のPB商品の販売も予定しているとのこと。

HMVと新星堂が小売り同士の合併によりシナジーを生み出すことを目指しているのに対し、TSUTAYAはメーカーとの協業を選択した。
まさしく先日のエントリーで想定した選択である。

しかし、CDのような創造性の高い商品でPBはどこまで成功するのだろうか。

まず正攻法として考えられるのは、「R30」や「クリスマスソング」のような既存曲のコンピだろう。
特にTSUTAYAのように全国で1,000店以上展開している大規模チェーン店であれば、多くの消費者ニーズやウォンツを把握し製造業へボトムアップすることができる。
また販売数と製造数のコンセンサスが図れるので、費用対効果も高い。
よってPB商品として最も適した商材である事は間違いないだろう。
事実、今回TSUTAYAもベスト盤のタイトルのリリースから始めている。

次に新曲についてはどうだろうか。
消費者のニーズに沿った音楽を創ると言うのは、一瞬違和感を感じてしまうだろう。
何故なら音楽はアーティストの感性で生み出す創造物だからだ。
しかし小室哲也氏や秋元康氏のように、マーケティングを元に音楽を生産している場合もある。
小室氏は自伝で綴っているが、理論的に時代と音楽とマーケットを見つめ、音楽創作に活かしている。
先見の明があるマーケティング能力の高い音楽プロデューサーと組む事で、新曲についても十分にPB商品が成功する期待が持てそうだ。
特にテレビやイベントとのタイアップ曲や企画物に関しては親和性が高いだろう。

遂に今回TSUTAYAは、販売店と言う「コンベヤ」の立場から、製造側である「コンテナ」領域へ踏み込んだ。
軌道に乗り始めたら、先述の通りアーティストと組み、PBから新曲を出すのは間違いないだろう。
そして、TSUTAYAは権利元となる「コンテンツ」の立場をも包括する事になる。
そうなった時、ユニクロやABCマートがそうだったように、垂直統合型でオフラインの音楽販売シェアを高めるTSUTAYAは、業界の雄として君臨するかもしれない。

2009年11月16日月曜日

東田トモヒロ「StayGold」リリース!

先週、東田トモヒロがニューアルバム「StayGold」をリリースした。

東田さんと言えば、2ヶ月前にサンセットライブでステージを観る機会があったが、相変わらずの心震わす歌声で魅了していた。
インディーズでの活動でも非常に楽しそうにいていたのが印象的だった。

実はそのサンセットライブの直後に、下記PVの撮影が行われたそうだ。
出演はなんとGravityFreeの2人。
各夏フェスで描く彼らのペインティングは超絶的で圧巻。
音と視覚で感動させる堂々たるPVが出来上がっている。
要チェック!






2009年11月15日日曜日

【BOOK REVIEW】生命保険のからくり

生命保険のからくり (著)岩瀬大輔



今までタブーとされていた生命保険の原価や利益の仕組みを公開し話題を呼んだ、ライフネットの創業者であり副社長の岩瀬氏による、生命保険の解説本。
生命保険の意義や目的、商品や儲けの構造、さらには選び方のアドバイスなどが非常に丁寧に書かれている。

通常はどの市場でも企業間競争により、品質の向上、価格の適正化、そして消費者ニーズを満たしていく。
しかし護送船団方式だった保険業界では企業間競争が乏しく、また運用計画性の低い商品開発による多大な逆ざや、数十年前から変わらないセールスレディによるコストの高い販売方法など、旧態保険会社の経営実態は酷いことがわかる。

その原因は、かつて大蔵省の規制の下、商品や保険料が同一で大きな差が無かったため、どの会社で加入しても問題無かったからだ。
ただ、現在規制は緩和され、外資企業も多く参入し、商品や保険料は多様化しているので、加入者個々人が商品を見極める力が必要になってくる。

冷静に考えれば、保険料は毎月の支払金額は小さくても積もれば数百万〜数千万円になることがわかる。
家や車に次ぐ位の金額にもなる保険に対して、保険の仕組みや内容の理解が無いまま加入するのは、リスクが高いと誰でも思うだろう。
ましてや、セールスマンやセールスレディへの義理人情や、お付き合いで加入するのは言語道断なわけだ。

ちなみに、世の中の販売物と同様に、保険料も企業努力によって値下げされていると思いがちだが、実は保険商品の場合、セールや割引は法律によって禁止されている。(これは私も知らなかった。)
よって、広告やパンフレットなどでお得感をがありそうな保険商品であっても、必ずそのサービスに相当する保険料が算出されているというわけだ。

よって保険料の差は、商品そのものの構造と、各企業の利益を加味した値段設定に寄与される。
だからこそ、自分にあった保険商品の選択、適正価格の是非(事業コストや悪運用によるコストが隠れて上乗せされていないか)をジャッジできる事、もしくはジャッジできるを相談相手を持つ事が重要になってくる。

その相談相手の一つとして、消費者目線で書かれている本書は最適である。
生命保険加入前、見直し時には是非読むことをオススメしたい一冊。

2009年11月14日土曜日

【BOOK REVIEW】政権交代バブル

政権交代バブル (著)竹中平蔵



小泉政権で経済・金融政策、郵政民営化などを取り仕切った竹中氏が現在の民主党政治に警鐘を鳴らした本。
ただの民主党批判ではなく、民主党の優れた政策と課題項目をきちんと列挙し、課題項目については論理的に理由と今後の道筋を示した経済面での提案書になっている。

格差社会をつくったと喧伝されている小泉政権だが、実は小泉改革の経済成長により、1980年代から高齢化とグローバル化により拡大してきた格差スピードが緩和されている。
これは「家計調査による所得格差の推移」の論文でも統計的に示されているように、格差社会と啓蒙されていたのは、小泉批判側のネガティブキャンペーンだった事が分かる。

その期待成長率が高まり内需が拡大した小泉政権時代に比べ、現在は低価格商品・サービス競争が過当化し、市場規模が広がらないまま消費を奪い合っているだけの経済政策になっており、このままでは日本経済の成長が無いと著者は指摘している。

そして最も懸念しているのは、経済成長が無いまま再分配政策だけに突っ走ってしまうと、経済破綻もしくは低福祉・高負担の重税国家の道しか無くなってしまうということだ。

諸外国の事例として、フランスのミッテラン政権が興味深い。
社会主義色の濃いミッテラン大統領は、就任後に9つの企業、金融グループと銀行部門を国有化し、さらに最低賃金、家族手当、老齢年金の3つを引き上げを行い、一方で富裕税を新設した。
また労働時間の短縮と年次休暇の拡大によりワークシェアリングの実現を目論んだ。
これらは現在の民主党のマニフェストと似ている再分配政策である。

当時は深刻な世界不況で、各国が引締め政策を採る中にもかかわらず、公共支出を拡大した成長路線を描いたようだ。
しかし社会福祉にだけ目を向けたため、生産が拡大せず、また供給力の強化をしないまま再分配を重視した結果、低成長のまま失業率が上がり、物価も13.4%も上昇したインフレ状態となり、経常収支は260億フランの赤字で財政破綻状況に陥った。
その結果、財政改善のために社会主義政策から自由主義的経済政策へと転換せざるを得なくなり、結局は歳出削減の他に中間層の増税や公共料金の値上げなどが行われた。
この事実は、社会保障にお金を注ぎ込んでも経済は成長しないことを示唆している。

著者によれば、「資本」「労働」「技術」のいずれかのインプットが増えなければ、お歳暮やお中元を贈り合っているだけで全体のパイが広がらず、日本経済は成長しないという。

例えば「こども手当」も経済成長には貢献できないと言う事だ。
著者は、税収が40数兆円しかないにも係らず実現には5.5兆円が必要になること、出生率を高める具体的な施策が提示されていない事から、実態はバラマキだとも指摘している。

要するに社会福祉を重視した政策は、一時的に国民は喜ぶが、長期的な成長につながらず最終的には国民が苦しむはめになるということ。

現在日本は、所得再分配を強化する社会主義的な方向に向かっているが、その政策に是非を唱えるのは国民である。
国民も目先の手当に一喜一憂するのではなく、将来を見据えた政策を評価できるリテラシーをもつことが重要だということ。
そしてこのままでは、いずれ低福祉と重税に苦しむ事になることが予想されるので、国の社会保障に頼らない自己防衛策を今から考えておく必要がある。

論理的で分かりやすい解説は説得力があり、現政権を理解できる良書である。

2009年11月8日日曜日

【BOOK REVIEW】脱広告・超PR

脱広告・超PR (著)山田まさる


PR会社の社長である著者が、従来の広告やPRでは消費者に情報が届かなくなっているとし、双方向型のコミュニケーションと情報の連鎖的な伝達で消費者を動かす手法(連鎖型IMC)を提唱している。

マスメディアでの広告よりもインターネットでのコミュニケーションが消費者の心を動かすようになってきた今、戦略的なPRの取り組みが非常に重要であることが分かる。
そのPR方法に向けて、インターネットの仕組みや現代の消費者行動を解明し、ケーススタディを取り入れながら具体的に説明しており、とてもわかりやすい。

著者によると、PR戦術は「ニュースリリースの作成と発信」「報道資料の作成」「記者発表会」「取材ツアー」「メディアキャラバン」など30年近く進化していないという。
今後は、ブロガー対策やSNSの活用、ブログパーツなど配信ツールの開発で、ウェブやモバイルを活用したコミュニケーションに進化させ、PRのクオリティを高める必要があるとしている。

またクチコミPRを行うにあたり、マスコミとクチコミの協奏が“ざわめき”を起こし、大きなうねりへと波及し連続的なコミュニケーションが生まれるとし、マスメディアもPRの重要なメディアとして位置づけている。
事実、ネット検索キーワードの70%、モバイル検索では80%がテレビ番組で発信された言葉だそうだ。

インターネットの世界では、企業発信の情報よりもSNSの日記や比較サイトのレビューなどの方が信頼性が高い場合も多く、話題やポジティブ評価を創出させるためにも、クオリティの高いPR戦略が求められてくる。
しかし「Webのしかけ方」のエントリーでも書いたが、インターネットに不慣れな企業の広報・宣伝の担当者は多く、実際に自身でCGMメディアやツールなどを使用しないこともあり、WebPRの重要性に気がつかない。

そしてPRというとタダでメディアに情報を掲載してもらうことに傾倒している節がある。
しかし情報過多の今、マスメディアでの情報発信は消費者の記憶に留まらない。
その話題が発信された後、いかにターゲットに対してコミュニケートされているかが重要で、そこまで辿り着くための手法が、WebPR戦略なのである。

広報や宣伝部門にて、「テレビ担当」「雑誌担当」「インターネット担当」などメディアによる分業化はありがちだが、コミュニケーションは一つの線で結ばれているのだから、WebPRのリテラシーを高め、始点から終点まで一貫した戦略・戦術を考えるべきだと考える。