2009年11月8日日曜日

【BOOK REVIEW】脱広告・超PR

脱広告・超PR (著)山田まさる


PR会社の社長である著者が、従来の広告やPRでは消費者に情報が届かなくなっているとし、双方向型のコミュニケーションと情報の連鎖的な伝達で消費者を動かす手法(連鎖型IMC)を提唱している。

マスメディアでの広告よりもインターネットでのコミュニケーションが消費者の心を動かすようになってきた今、戦略的なPRの取り組みが非常に重要であることが分かる。
そのPR方法に向けて、インターネットの仕組みや現代の消費者行動を解明し、ケーススタディを取り入れながら具体的に説明しており、とてもわかりやすい。

著者によると、PR戦術は「ニュースリリースの作成と発信」「報道資料の作成」「記者発表会」「取材ツアー」「メディアキャラバン」など30年近く進化していないという。
今後は、ブロガー対策やSNSの活用、ブログパーツなど配信ツールの開発で、ウェブやモバイルを活用したコミュニケーションに進化させ、PRのクオリティを高める必要があるとしている。

またクチコミPRを行うにあたり、マスコミとクチコミの協奏が“ざわめき”を起こし、大きなうねりへと波及し連続的なコミュニケーションが生まれるとし、マスメディアもPRの重要なメディアとして位置づけている。
事実、ネット検索キーワードの70%、モバイル検索では80%がテレビ番組で発信された言葉だそうだ。

インターネットの世界では、企業発信の情報よりもSNSの日記や比較サイトのレビューなどの方が信頼性が高い場合も多く、話題やポジティブ評価を創出させるためにも、クオリティの高いPR戦略が求められてくる。
しかし「Webのしかけ方」のエントリーでも書いたが、インターネットに不慣れな企業の広報・宣伝の担当者は多く、実際に自身でCGMメディアやツールなどを使用しないこともあり、WebPRの重要性に気がつかない。

そしてPRというとタダでメディアに情報を掲載してもらうことに傾倒している節がある。
しかし情報過多の今、マスメディアでの情報発信は消費者の記憶に留まらない。
その話題が発信された後、いかにターゲットに対してコミュニケートされているかが重要で、そこまで辿り着くための手法が、WebPR戦略なのである。

広報や宣伝部門にて、「テレビ担当」「雑誌担当」「インターネット担当」などメディアによる分業化はありがちだが、コミュニケーションは一つの線で結ばれているのだから、WebPRのリテラシーを高め、始点から終点まで一貫した戦略・戦術を考えるべきだと考える。



2009年11月7日土曜日

【BOOK REVIEW】インターネット・マーケティング

インターネット・マーケティング (著)前川浩基



インターネットのマーケティングを行うにあたり、インターネットの「潮流」「知識」「用語」などの初歩的な説明を広く解説している。

例えば、ロングテールや消費者行動AISAS、ネットでの4Pについてなどのコマースの基本知識、CGMやSNSなどコミュニケーションメディアの説明と動向、SEOやLPOなどサーチエンジンによるマーケティングなどが紹介されている。

基本的な事を丁寧に記されているので非常に読みやすく、新書なので、iPhoneの動向や、モバイルコマースなどにも触れられており、最新情報を知ることもできる。

インターネットマーケティングの一般的な知識が網羅されているので、これからマーケティングを始める方や、インターネット分野のマーケティングに自信の無い方にはオススメな本だ。
ただ既にECサイトの運営やインターネットマーケティング業務に携わっている方には物足りないかもしれない。


2009年11月5日木曜日

音楽市場の再編を考えてみる。

「市場が縮む音楽業界」再編は加速

音楽レーベル「ビクターエンタテインメント」が売却されるという先日のニュースには驚きつつも、現在のパッケージ市場を考慮すると妙に納得してしまった。

日本では、ビクター以外にも、ソニー、東芝など、電機メーカーを冠にした音楽メーカーが連立していた。
技術革新により世界をリードした日本の電機メーカー各社は、資金体力のある時に様々な事業を立ち上げたからだ。
製品にプロダクトサイクルがあるように、事業もいずれは衰退する可能性があるのだから、事業を多角化することでリスクヘッジすることは当然の流れである。
また音楽事業が企業の文化的側面を担うことで、ステークホルダーに対してのロイヤルティ向上にも寄与していた。
しかし時代は移り変わり、サムスンを始めとする他国電機メーカーの著しい伸張による本業の伸び悩み、技術革新とライフスタイルの変化による音楽事業の負債化で、企業経営が難しくなってきたのである。

その時に企業として迫られる選択は、
①限りあるリソースを本業に集中させる
②合併や買収により多角的な事業を展開する
の2つになる。

今回ビクターは経営判断として前者を選び、音楽事業の売却に至った。
逆に今回買収に手を挙げているコナミは、スポーツクラブ運営の事業に乗り出すなど、積極的に②を選んでいる。
特に音楽事業に関しては、本業であるゲームやオンラインビジネスとの相性が高く、新しい収益事業として狙っていたのかもしれない。

しかし数年前の東芝に続く再編だけに他のメーカーも懸念されるが、ユニバーサルやワーナー、avexなどは根本的に音楽事業が主体であるから、東芝やビクターとは大きく異なる。
またソニーについても音楽事業がグローバル化しているのでユニバーサルやワーナーに近い。
だからレコードメーカーの再編がすぐに起こることは考えづらい。

ただその企業も多くの課題を抱えているのは同じだ。
だからこそ、国内で音楽事業のみに特化していたavexは、パッケージ製作という「コンテナ」事業から、マネージメントという「コンテンツ」事業への移行、コンテンツホルダーとしてのビジネススキームの新しい取り組み、アジア進出による商圏の拡大など、次のビジネスへ転換をしている。

一方、音楽業界の再編を考える際に忘れてはいけないのが小売店である。
現在のパッケージ市場の収縮で最もダメージを蓄積していると思われるからだ。
CDは再販制度や商品特性からも他の小売と経営的なシナジーを生む可能性は低そうだ。
そこで考えられるのが、以下の2つの流れである。

①CD小売同士で合併
これは、規模の経済性を高め、売り手に対して影響力を大きくすることで優位に立つことができる。
音楽流通はコンテンツホルダー側に優位性があるが、販売シェアを高めることで、コストの交渉が可能になる。
また1店舗あたりの面積を小さくしながらもタッチポイントを増やすことができるので、オペレーションの効率化による収益の拡大が見込まれる。

②メーカーとの合併
イオンやユニクロなどの大手小売のように垂直統合型の経営にすることで小売マーケティング情報を活かしたプライベートブランドの制作ができる。
消費者のニーズや動向をより商品に反映させることで、効果的な販売が行える。
また楽曲権利などを活用することができるので、イベントや配信なども絡めた立体的なプロモーション活動が可能になる。

マーケティングの4Pで言うと、①はPlaceとPrice、②はProductとPromotion面を強化することができるわけだ。
新星堂は一度TSUTAYAと資本提携したが、シナジーを生み出せず提携を解消し、HMVを買収した大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ株式会社に買収されることになった。
よって現在は新星堂とHMVの株主兼経営は大和証券で同一である。
そして、本日HMV渋谷店とHMV ONLINEはリニューアルされ、新星堂の楽器屋「ROCK INN」が入り、シナジー効果を狙った展開がスタートした。
これは①の具体的な展開例である。

最後になるが、実際には音楽産業自体の市場は衰退しておらず、夏フェス等の大型イベントや、アーティストグッズの販売、着うた等のコンテンツ販売が、パッケージの収縮を補っている。
これはレコードがCDへ、ビデオテープがDVDへ変化したような、メディアの変遷ではなく、ライフスタイルそのものが変化していることがうかがえる。

そもそも、今ある音楽流通のシステムは商用化された近代ビジネスモデルなわけで、音楽を広く深く伝える手段のゴールではないと個人的には思っている。
経済のシステムとして再編が起ころうとも、音楽の「伝え方」「伝える物」「伝える場所」「伝えるタイミング」などが変化していくことは市場の原理であり、リスナーである消費者がより望むべき方向へ進んでいるはずと考えたい。

2009年11月4日水曜日

【BOOK REVIEW】自分のお金の育て方

自分のお金の育て方 (著)中村宏



ファイナンシャルプランナーである著者が、身の回りで発生するお金に関しての発想の転換を促した本である。

例えば、
・どんなときでも「現金や預貯金」が一番
・貯蓄の代わりに保険に入る
・保険に入るのは当たり前の事
・業者が提案した住宅ローンを組む
・返済期間を長くして毎月返済額を抑える
・医療保険の日数制限は長いものがいい
などの発想はいますぐ捨てなさい!
とし、一つ一つの考え方を指南している。

FPの勉強も兼ねて購読したが、副題や帯に書かれているキャッチーな言葉とは裏腹にどれも当然の内容で、物足りなかった。
投資、保険、住宅などの金融商品の購入や、資金運用に悩んでいる新社会人や主婦などには適しているのかもしれない。

ただ一点、資産運用の項目で指南している、期待収益率と標準偏差のデータの使い方については、自身も活用できていないので参考になった。
今後は投資商品を選ぶ際に気にしていきたい。

2009年11月3日火曜日

mixiサンシャイン牧場で個人情報流出

先日「混沌としているサンシャイン牧場」をエントリーしたが、本日版のニュースで個人情報の流出が記事になっていた。

その内容は、「
ミクシィ、4200人の情報が3日間「露出」」。

サンシャイン牧場のシステム不具合により、クレジットカードでアイテムを購入した利用者の電話番号とメールアドレス最大約4,200人分が第三者によって取得可能な状態になっていたと報じている。

また、有料で購入したアイテムの記録が消滅するなどのトラブルもあったそうだ。

本件を受けてmixiは「今後、課金システムを導入する際には弊社として審査するなど、運用を見直したい」としている。
そもそも個人情報をベースにした会員制サービスなのに、外部企業が運営しているゲームを審査無しに設置していると言う事に驚く。
しかも、先日のエントリーでも触れたが、サンシャイン牧場の運営会社は、中国のゲーム会社であるのにだ。
日本の大手ゲーム会社であればコンプライアンスも徹底しているため、信用取り引きも分からなくはないが、それでも会員制サービスサイトの運用として非常に甘すぎる。
これには企業姿勢を疑ってしまう。

一方、ユーザー側もインターネットに慣れてきて、個人情報やクレジット情報を渡すのに躊躇が無くなっている気もする。
インターネット内の情報は、いつでも漏洩する危険性をはらんでいることをユーザーも認識しなければいけない。
SNSサイトだけでなく、ECサイトやオークションサイトなど大手サイトでも然りだ。

ただ最近は、TwitterやTumblrなどのように、ログインIDとパスワードの設定だけで使用できるSNSサイトも増えてきた。
逆に個人情報を入力しなくてもコミュニケーションが楽しめると言う事を証明してくれたと言ってもいいだろう。
通常、企業は無料で使用させる代わりに、メールアドレスの取得やデモグラフィック情報を取得することで、ダイレクトメールやターゲティングなどの広告枠を販売して収入を得るスキームで運営している。
ログインIDとパスワードだけで使用できるサイトは、よりユーザーを集めスケールメリットで広告枠を販売するか、魅力的なサイトをつくり、YouTubeやBloggerのようにそれ自体を大手企業に買ってもらうかになる。
しかしこれはグローバルサイトでなければ成立しないだろうから、日本のみで使用できるサイトでは難しいのかもしれない。


2009年11月2日月曜日

ラグビー協会会長 森喜朗氏の大きな存在感

先日国立競技場で開催されたニュージーランド「オールブラックス」対オーストラリア「ワラビーズ」の試合に先駆けて、日本ラグビー協会会長の森喜朗氏が挨拶をした。

ラグビーファンは周知の事だが、初めて観戦した方は疑問に思われたかもしれない。
何故元総理大臣の森喜朗氏がラグビー協会の会長なのかと。

そもそも森氏は早稲田大学ラグビー部のOBという建前で現職に就いているのだが、実際は入部して4ヶ月で退部している。
体調的な事もあったようだが、通常4ヶ月しか在籍していないのに、強豪早稲田大学ラグビー部を名乗れるというのはいぶかしい。
だからラグビーを熱心に打ち込んだ人ほど、森氏に対して嫌悪感を抱くかもしれない。

ただ、現役時代どのような選手だったかはさておき、ラグビー協会や現在のラグビーの運営に対して、森氏の存在が大きいのは間違いないだろう。以下は全て推測に過ぎないがあり得る話しである。

例えば先日のオールブラックス対ワラビーズの試合が国立競技場で開催できたのも森氏による計らいだと推測できる。
開催日程のイニシアチブはチームや選手のスケジュールを考えると、確実にIRB(国際ラグビー評議会)やニュージーランド側にある。
ゆえに、その日程に合わせて日本側は会場を用意しなければならない。
秩父宮競技場であればラグビー専門競技場であるからすぐに手配できるが、収容人数が少なくIRBは納得しないだろうし、また2019年のワールドカップに向け日本にも多くのラグビーファンがいてワールドカップを開催しても盛り上がるということをIRBへPRすることが本試合での日本の責務だった。
だから開催会場は5万人を収容できる国立競技場しか考えられないわけだ。

一方、国立競技場側は、集客力もチケット収入も放映収入もJリーグに劣るラグビーの試合に対して貸すのはあまり賛成できない。
しかも巨漢の大男達が暴れるラグビーの試合では整備された芝が痛むのは必至だ。
事実先日の試合後、芝はだいぶ荒れていたように思う。
そこで、ラグビー協会会長の森氏の登場である。
政治的権力がありキングメーカーとも言われる森氏が取り計らえば、この手の問題はそつなく解決するはず。
何故かこの週はJリーグの試合が無く、スポーツニュースのネタが減りラグビーの試合がメディアに掲載されやすかった事も、もしかしたら関係しているのかもしれない。

さらに、前回のラグビーワールドカップが日本テレビで中継できたのも、森氏と読売グループ主筆である渡辺恒雄氏の関係が寄与していると憶測できる。
2年前に日本で開催されたアメフトのワールドカップで、日本代表が決勝にいったのに、民放での放映が一切無かったことを考えれば、優遇されたと考えてもおかしくはない。

真実は分からないが、ラグビーがスポーツ界やメディアの中で融通が利いているのは、間違いなく森氏の存在によるところが大きいと思う。
政治家として、一ラグビー選手としての意見は別として、ラグビーファンはもっと森氏に感謝しても良いのかもしれない。

日本でワールドカップを迎える2019年も森氏がいれば、強力な政治的ネゴシエーションで、入国管理、宿泊手配、競技場手配、交通網の整備、警備体制、メディア対策、各国VIP対策、そして予算面など様々な部分が解決できることが推測される。
ワールドカップ成功のためにも、是非元気に会長職を勤めていてほしいところ。

しかし本当の功労者は、森喜朗氏をラグビー協会会長に祭り上げた人物なのかもしれない。
それは一体誰なのであろうか。
知りたいところだ。



2009年11月1日日曜日

【BOOK REVIEW】世襲議員のからくり

世襲議員のからくり (著)上杉隆



「ジャーナリズム崩壊」でマスコミ界に様々な波紋を起こした上杉氏の話題作。
タイトルの通り、日本の政治家に世襲議員が溢れていることを指摘し、理由と裏側に迫り政界のグレーゾーンを糾弾している。

日本の政治家のうち、自民党はおよそ40%、民主党では20%程度が世襲議員だと言う。
アメリカの全議員に占める世襲議員の割合が5%程度だということを考えると異常な割合だ。

世襲議員の特権はもちろん「地盤」「看板」「カバン」の三バンを引き継げることにある。
驚いたのは「カバン」と言われる政治資金が非課税で親から子供へ相続できると言う点だ。
多くの富裕層は相続税で大きな悩みを抱え、相続対策するために大変な労力を要する。
土地や家や自社株に含み益のある自営業者やオーナー企業は、相続税の支払に悩み自殺や親族同士の紛争が発生したり、長年続いてきた店をたたむことなども珍しくはない。
しかし、政治家は後援会などの政治団体間への寄付などを通して、無税で莫大な資金を子の政治資金へと移行することができるのだから不公平極まりない。

例えば、小渕元首相の娘である小渕優子氏はTBSに勤めていた普通のOLだったが、政界進出のためにTBSを辞め選挙に出馬。
その小渕優子氏の政治資金は、政治団体を経由し父から1億2000万円をなんと無税で相続しているそうだ。
一般人が政界進出を狙っても、到底1億2000万円の資金を準備することはできない。
1億2000万円の政治資金に加え、後援会組織なども継承して出馬しているのだから当選して当然である。
世襲議員が有利であることは一目瞭然で、一般人が政界に参画するのには大きなハードルがあることは否めない。

また世襲議員は地盤も引き継いでいるため、東京で育っているのにもかかわらず、親の地盤である地方の選挙区で立候補することになる。
愛着のない親の出身地に、選挙の時だけ出向き我が物顔で応援を呼びかける。
そこには自身の友人も恩師もいないのだ。
本来国の仕事に集中すべきはずである国会議員が、地元有権者へのアピールのために、公共事業を名目にお金を落としたり、陳情を受けて取り計らったりしていることがほとんどだ。
郷土のために政治家として役に立ちたいのであれば、知事や町長、都道府県議員や市町村議員になればよいという上杉氏の意見には頷けてしまう。

もちろん世襲議員が悪いわけではなく、仕組みが悪いということを著者も指摘している。
親の姿を見て親と一緒の職業に就きたいという家はどこにでもある。
特に日本では子供に自身の仕事を継がせることをゴールとしている事業者も多く、それが伝統をつくってきた場合もある。
しかしその閉鎖感が、新しくその道にチャレンジする人達を妨げたり、敷居を高くすることに寄与しているのであれば、それは取り外すべきである。
不公平と言うのはもちろんだが、その職業に新しい息吹が吹き込まれず、革新や発展の可能性が減ってしまうからだ。

世襲議員が多い国会議員は、現状から不利になるような仕組みをつくることは難しいだろうが、世襲議員だと後ろ指さされないためにも、真の政治家として仕組みを改善してほしいところ。