2015年9月23日水曜日

ラグビーW杯 ジャパンが南アフリカに勝てた7つの理由

ラグビーワールドカップ2015が幕を開け、ジャパンが南アフリカに歴史的勝利をおさめた。
深夜にもかかわらず熱く興奮し鳥肌が立った。涙した。忘れられない一日となった。


連日メディアでは「奇跡」「大事件」と報道され、ラグビーファンであるほど南アフリカの強さを知っているため予想し得なかった勝利だったはずだ。
しかしエディHCや岩渕GM、そして選手たちは「勝つために準備してきた」「厳しい練習の延長線上で価値があった」とし、既に予選突破に向けて次の試合に意識が向いている。
2019年のワールドカップ自国開催に向けて、選手やスタッフの意識の高さに驚く。

岩渕GM氏の試合後のコメントは以下の通り。
私自身の気持ちは、意外なほど落ち着いています。私たちは、この試合に勝つためだけに数週間、数カ月前から準備をしてきたわけではないからです。むしろ今回の試合結果は、あくまでも世界に勝てるチーム作りを目指していく上での1つのステップ、4年前からやってきた練習の積み重ねの結果に過ぎないとも言えます。
その意味で今回の勝利は、奇跡の勝利などでもありません。 
ラグビー界の常識から見れば、日本の勝利は奇跡のように映るでしょう。しかし私たちが取り組んできたのは、奇跡の力などに頼らなくても勝てるようにする――当たり前のプレーを、当たり前のようにできるチームを作ることでした。 
(中略)今回の勝利は、スーパーラグビーへの参戦、そして2019年には世界でベスト4に入り、W杯日本大会が始まる際には優勝を狙えると公言できるようなっておくという目標を達成するためのステップでしかありません。(NumberWebより
ジャパンがいかに意識改革して試合に臨んでいるか、そして目標を実現するための準備を徹底して行なってきたかが分かる。

今回のジャパンの勝因は各メディアや解説者が分析しており、岩渕GMは相手に力負けしなかったのが最大の勝因になったと語っている。
果たして過去大会と比較して何が違ったのか。
一ファンとしてワールドカップで勝利した理由を7つにまとめてみた。

①ハンドリングエラーの少なさ
極度の緊張や相手ディフェンスのプレッシャーからか、過去の大会で目立ったのがハンドリングエラーの多さ。
ジャパンが勝つために「素早いパスまわしをする」ということは今までも語られてきた事だが、ノックオンでアタックが続かない事がしばしば見受けられた。
それが今回はほとんどハンドリングエラーをしていない。
これもプレッシャーのかかる場面を想定して意識の高い練習をしてきた成果なのだろう。
また天候がよくワイドに展開したいジャパンには好条件だったとも言える。

②セットプレーの安定感
アタックの起点になる「スクラム」「ラインアウト」がとても安定していた。
スクラムは素早く球出しすることで相手のパワーを無力化していたし、ラインアウトは多くのサインプレーにより的を絞らせなかった。
1つめのトライはラインアウトからのモール、2つめのトライはラインアウトからのBKのサインプレー、3つめのトライはスクラムからと、セットプレーから全てのトライに結びついた。
スクラムはマルク・ダルマゾ氏(元フランス代表)、ラインアウトはボーズウィック氏(元イングランド代表)と、両FWコーチによる成果といえるのだろう。

③ディフェンス、ディフェンス、ディフェンス
とにかくディフェンスが素晴らしかった。受ける事なく前に出てタックルをし続けた。
特にラインアウトのディフェンスでは、極端なくらい上がりが速かった。
大きい相手に徹底して2人でタックルをし、タックル後にはすぐに起き上がってまたタックル。その繰り返しは圧倒的だった。
だからこそ反則も少なく相手が攻めるチャンスを与えなかった。
そして自陣に攻め込まれているシーンで幾度となく南アフリカからターンオーバーをし相手のチャンスを潰すことができた。

④リザーブメンバーの活躍
代表メンバー全員が厳しい練習を共にし、テストマッチや海外遠征も豊富に積んできただけに選手層が厚い。
後半メンバーが大きく入れ替わっても流れは切れず、むしろペースアップしたのだから驚く。
そしてジャパンにもインパクトプレーヤーがいたことは衝撃を与えた。
フランスのシャバル、オールブラックスのソニー・ビル・ウイリアムズなど、強国には試合が停滞しているときに流れを変えるインパクトプレーヤーがいる。
今回オールブラックスとアルゼンチンの試合では、なかなか試合のペースが掴めないオールブラックスは途中からソニー・ビル・ウイリアムズを入れ見事に主導権を握る事ができた。
今回ジャパンでそのシーンが見られるとは思わなかった。
アマナキ・レレイ・マフィは交替後に、いきなり相手選手を吹っ飛ばし強烈なインパクを残した。その後も何度もゲイン突破でジャパンに推進力を与えた。
小兵のジャパンにこんなにフィジカルの強い選手がいるのかと相手は警戒したのではないか。味方もそのプレーで精神的に優位にたったはずだ。
最後にトライを決めたヘスケスも素晴らしかった

⑤驚異的なフィットネス
前半までは善戦する、でも後半20分以降は足が止まって差が開く。これはワールドカップでいつも見る光景だ。
ラグビーはコンタクトプレーが続くため、体格差の劣る日本はコンタクトプレーで蓄積された疲労が後半テキメンに表れる。
でも今回は違った。むしろ後半20分以降に相手の足は止まり日本は走り続けた。
ラストプレーでの逆転トライがまさにその結果だ。
15人平均で身長6センチ、体重6キロ重い相手に計127回のタックル(南アは102回)をしており疲労度は相当なもの。
それでも最後までは走り続けられるというのは驚異的なフィットネスだ。

⑥奇策
左右高低に蹴るキックオフでは、相手の高さや走力を無力化にした。
素早い球入れやキャッチング後にポイントをずらすラインアウトでは、的を絞らせず常に警戒心を与え続けた。
ワールドカップという大舞台では相手に飲まれることが多かったジャパンだが、南アフリカ対策の奇策で相手はペースを掴む事ができなかった。
しかし南アフリカ相手にパニックにならず奇策を仕掛けることができたのも、フィットネスの高さから冷静な判断力が継続できたからだろう。

⑦気持ちの充実
試合を通して印象的だったのは選手が時折見せる笑顔だ。
ハードワークしながらも試合を楽しんでいるようでもあった。
世界一過酷なトレーニングを積んできたという自信がそうさせているのだろうか。
王者に対して真正面から戦うひたむきな姿勢は、会場を震わせ大きなジャパンコールにもつながった。
漫画スラムダンクでの湘北と山王工業の試合が現実に起こったのだ。
まさに心技体の充実。勝ちにこだわり続けた精神力、心のコンディションづくりが素晴らしかった。

日本ラグビーの歴史が変わった試合をリアルタイムで体感する事ができた幸運に感謝。
感動をありがとうございました。



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