2011年3月21日月曜日

【BOOK REVIEW】K-POPがアジアを制覇する

K-POPがアジアを制覇する (著)西森路代



K-POPアイドルと日本のアイドルの違いを中心に、日韓の文化や背景を辿りながらK-POPの強さを紐解いている。

容姿の比較では、韓国の女性アイドルはスタイルがよく胸より腰のくびれを強調しており、分かりやすいセクシーさがあるという。
確かに男性が女性の「くびれ」を本能的に注目することは科学的にも実証されている。
女性の腰のくびれは女性ホルモンによるもので健康状態を現し、くびれが少ない女性ほど成人病やガンにかかりやすく、妊娠する確率も減るため、男性は視覚を駆使し女性の腰のくびれを無意識に見て本能的に評価を下していると言われている。
(参考エントリー:
【BOOK REVIEW】だから、男と女はすれ違う
だからそれを同性の女性が憧れるというのも頷ける。

また韓国の女性アイドルが健康的でセクシーなのは、アルバムや曲がダウンロード販売された数の順位だけなく、軍の慰問公演に呼ばれることも人気に関係するからとのこと。
日本のアイドルのような幼い容姿よりも、健康的でセクシーなアイドルの方が軍人に受け人気が高まるからだ。
国の徴兵制度がアイドルの人気に寄与しているとは意外である。

内面の比較では、日本人は自分を原石だと思い「自分磨き」を行うが、韓国人は自分の限界を感じたら、外側からそれを持ってきて自分と合体させることで「バージョンアップ」を行うということ。
日本人が自分の中に「何か」を求めるのとは対照的に、韓国人が自分の外に「何か」を求めるというのは、肉体改造や整形、寮生活で下積みするハードなトレーニングなどにあらわれている気がする。

戦術的な比較ではダンスが取り上げられている。
K-POPではダンスと曲に一体感があるためダンススキルが高いと思われがちだが、フォーメーションや見せ場の入れ替わりなど振付けの仕方に違いがあるという。
トップクラスの実力は日韓とも同じくらいだが、表現方法、攻め方や戦い方が違い、「K-POPはガチの総合格闘技みたいな感じで、日本のアイドルはプロレス的でエンターテインメント性が強い感じ」という例えが言い得て妙だった。

ゆえにダンスの違いから日韓のカメラワークは異なり、日本の場合は個人のアップが多く表情をじっくりと確認できるようにするが、K-POPの場合はフォーメーションを見せる場面が多く全体を映すことも多いそうだ。
ただ最近の日本のアイドルも、ハロプロ勢や、ももいろクローバーなどはフォーメーションや見せ場の入れ替わりにも力を入れており、K-POP同様YouTubeでバイラルを起こしやすいパフォーマンスとなっているので、これは時代のトレンドなのかもしれない。

ファン視点では、日本は青臭く、韓国は緊張感や張りつめた感じとの比較をしている。
日本のアイドルは歌や踊りの部分でどこか応援したくなるような隙のようなものが存在していおり、そこが魅力になっているという。
例えるならば、日本のアイドルはステージで大汗をかき等身大でパフォーマンスしているが、韓国のアイドルは日本の80年代アイドルのように汗やトイレのイメージも無い完璧な偶像を演出しているということなのかもしれない。

そして本書で興味深かったのは、男女の「萌え」についての違いだ。
女性はひとつひとつの萌え要素に反応するのではなく、人と人との関係性に最大の「萌え」を感じることが多く、メンバー同士がじゃれあっていたり、信頼し合っているという雰囲気や行動・言葉に弱く、男性アイドルが仲の良い姿を見せると「萌え」るそうだ。
さらに女性はイケメンが好きというよりも、イケメンの持つ個性を見つけ出すことが好きなため、アイドルのインタビューを一字一句読み取り、その内面までを知りたがることが多く、グラビアでインタビューのない雑誌にはお金を払わないという傾向があるとのこと。
よって男性同士のようにアイドル論や批評を語る必要なく、ただアイドル本人の気持ちを知りたいだけで、その最新情報をファン同士で共感のやり取りを楽しんでいると説明している。

日本と韓国のアイドルの違いは感覚的には分かっていても、文章で読むと改めて様々な違いを実感する。
特に男女の「萌え」の違いについては、マーケティングにおいても非常に有意な話しだった。

本書はK-POPアーティストの特徴や成り立ちなども書かれているので、楽しみながら読むことができる。
K-POPの背景に触れた書籍はまだ少ないので、興味のある方は一読してみてはいかがだろうか。


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