2011年2月13日日曜日

【BOOK REVIEW】新ソーシャルメディア完全読本

新ソーシャルメディア完全読本 (著)斉藤徹



ソーシャルメディアの第一人者の一人であるループス斉藤氏の著書。

ここ最近、ウェブのバナー広告をクリックした覚えはありますか?
1日何十通も送られてくるEコマースサイトからのメールマガジンを読んでいますか?
記憶に残るCMをいくつ挙げられますか?
ほとんどの人は、あまりにも膨大な情報のシャワーを受け、それらの広告情報をスルーする神経回路が出来上がってしまっていると著者は指摘する。

インターネットの登場により情報量は爆発的に増えており、選択可能な情報のうち、わずか4%の情報しか人は処理できなくなっているそうだ。
処理可能な限られた情報の質と価値を高めることが生活者の望みであり、ソーシャルコマースは、そのような現代人の潜在的な望み(インサイト)を直撃するものと位置づけている。

個人属性や人間関係をベースにしたソーシャルグラフを活用することで、よりパーソナライズされた「広告」や「検索」を提供できる一つの例として、専門家(腕利きバイヤー)による人的リコメンデーションは、機械的リコメンデーションに対して最大5倍もの購買成果が上がっているという大手音楽系コマースのマーケッターのコメントを紹介している。

一方海外では、フィリップ・コトラー氏が「マーケティング3.0」という新しいマーケティングの概念を提唱しており、目的の変遷を次のように述べているそうだ。
・マーケティング1.0 企業側が一方的に「どのようにして販売するか?」
・マーケティング2.0 企業が顧客に対して「どのように継続購入してもらうか?」
・マーケティング3.0 企業は生活者に「どのように(製品開発や販売などに)協力してもらうか?」

著者はこのマーケティング3.0はサザエさんに登場する三河屋と同じだとし、磯野家に出入りする御用聞きサブちゃんこそが、ソーシャルメディア時代のビジネスのお手本とするべき姿という。
日本文化の底流にある“主客一体”という思想で、欧米型資本主義経済による大量生産、大量消費の時代の先にあるのは、日本人が得意とする生活者参加型、いわば「和」の時代が訪れ、それが世界のスタンダードとなっていくと予想している。

そして企業の新しいマーケティングは、顧客を単なる消費者としてみるのではなく、「多元的で、精神満足を求め、価値の想像に積極的にかかわろうとする人間」として理解し、そのような顧客のニーズに応えることであり、ソーシャルメディア活用における本質的価値は、まさに古き良き時代への回帰だとまとめている。

なお本書ではソーシャルメディアの概観だけではなく、実践的なアプローチまで言及しており、例えば情報伝播を改善する3つの方法として、
① ブランドのファンを増やす
② ブランドの共感度を上げる
③ 影響力の強いインフルエンサーとの交流を深める
を提案している。

非常に分かりやすく丁寧にソーシャルメディアの活用を紐解いている一冊であり、企業のマーケティング担当者およびPR担当者は一読しておいたほうがよいだろう。


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