2010年11月8日月曜日

【BOOK REVIEW】Jポップの心象風景

Jポップの心象風景 (著)烏賀陽弘道



J-POPを代表する「桑田佳祐」「松任谷由実」「CLAY」「ザ・ブルーハーツ」「草野マサムネ」「浜崎あゆみ」「椎名林檎」「B'z」といった8組のアーティストを取り上げ、リスナーが魅せられてしまう要因は何なのかを分析している。
分析では、心理学、民俗学、神話学などの手法が使われているが、やや当てつけの感も否めなく、あまり納得はできなかったが、その中でも関心を持った分析を挙げてみる。

まずは「ザ・ブルーハーツ」について。
J-POPのリスナーは歌詞に共感をもつことが多いが、取り分けその傾向が強いのが「ザ・ブルーハーツ」である。
本書では、バブル経済が姿を現し物質万能主義にまみれた時期に、居場所を見つけられない人達が「生きることへの救済」としてオルタナティブな価値観の選択肢を見つけたのがロックと新興宗教(オウムや幸福の科学など)だったのではないかと分析し、その代表が「ザ・ブルーハーツ」だとしている。
メンバーや当時のファンクラブの幹部が宗教団体に加入したことなどは考慮しないとしても、確かに「ザ・ブルーハーツ」は時代背景を汲んだ歌詞であることは間違いないだろう。
ただそれは60年〜70年代のフォークシンガーも同じかもしれない。

「浜崎あゆみ」についてはこうだ。
デジタルマシンと音楽産業と言う巨大な装置を自らの意志で受け入れ、それらに制圧され加工されることで、利潤のための製品となっている。
そして、社会の危機を救う自己犠牲者として、大衆が持つ負の感情を投影している対象になっていると分析している。
要するに、松田聖子や中森明菜、さらにはモーニング娘。やAKB48の様に1アーティスト、アイドルとして捉えているのとは異なり、フィクションの中でもう1人の自分を「浜崎あゆみ」が演じてくれているということだ。
だから、虚像であり、非日常感であるためカリスマや教祖と呼ばれるのかもしれない。

著者が本書の分析を一つの解釈としての試論と位置づけているように、そのような見方として読めればよい本である。
このような文章が電子書籍などで気軽に読めると良いかもしれない。


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