2010年10月30日土曜日

【BOOK REVIEW】若者殺しの時代

若者殺しの時代 (著)堀井憲一郎




著者は軽妙なエッセイを書くことでも定評があるコラムニストで、2006年3月に放送を終了した日本テレビ系列の「TVおじゃマンボウ」にも出演していた堀井憲一郎氏だ。
「何でも調べるフリーライター」がキャッチフレーズだけあり、気になったことをイチイチ調べて分析しているところがユニーク。

若者であることが得なのは過去の話しで、いつの頃からか若者は損な時代になってきた。
それを本書では幾つかの転機を紹介しながら考察をしている。
もちろん著者の感覚によるところが大きいので、本書に書かれていることは氷山の一角に過ぎないが、世相をなぞりながらの分析は妙に的を得ている。

例えばクリスマス。
1984年頃までは花見と同じ様にただのイベントだったが、それから若者雑誌を始めとするメディアの影響からか恋人達の日に変貌してしまったという。
バレンタインも同様だ。
だから60歳以上の我々の親世代は、クリスマスに恋人と過ごす日という感覚は全く無かっただろう。

その中で著者の印象的なフレーズがある。
自分達でまだ稼いでいない連中に、次々とものを売りつけるシステムを作り上げ、すべての若い人をそのシステムに取り込み、大人達がその余剰で食べてるという社会は、どう考えてもまともではないということ。
今では中学生や高校生をマーケットにしてビジネスを行うことは当然だが、どうやらそれは1980年代に始まったことのようであり、当然であることに違和感を感じることは必要な気がする。

その他にも、東京ラブストーリーでは、男に合わせる有森也実さとみ的人生を拒否し、自分を押し通す鈴木保奈美リカ的人生を選んだことで、女性は恋愛レートを上げたと分析。
自分らしい生き方は譲らない、女性であることも手放さない、どちらもかなえてくれる相手でないと恋愛しないという方向に変遷していったと言う。

また面白いエピソードに携帯電話の歴史がある。
映画Back to the Future2の未来では、空を飛ぶことはできるが個人で携帯電話を持つ人は出てこないということ。
確かに手塚治虫や藤子不二雄の漫画が描く未来もそうかもしれない。
それだけ未来で空を飛ぶことを想像できても、一人1台の電話時代が来て、一人一人がインターネットで世界とつながるということは想像すらできなかったのだろう。

戦後生まれの若者たちの風俗現象は全共闘運動などの政治運動だった。
戦後目まぐるしく変化していく日本に対して不安が募り自身の存在意義などを問いたかったのかもしれない。
その次の世代の若者達は高度経済成長で豊かになった日本の中にいた。
貧しさからは抜け出し始め、消費することが生きていく満足感につながった時代なのだろう。
日本企業もアイドルもヤクザも全盛期、それが1980年代であり、そこが一つの到達点でありターニングポイントでもあった。
いつの時代も大人は「若者が何を考えているのか分からない」「昔に比べて今の若者は」などと若者をなじる傾向にあるが、それを作り上げてきたのは自身の豊かさだけを追い求めた大人達だし彼らのつくりあげてきた社会に責任があるのかもしれない。

自身がまだ社会に出ていなかった80年代と、自身が社会との接点を持ち始めた90年代を振り返ることができた、面白い一冊だった。


1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

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