新・都市論TOKYO (著)隈研吾 , 清野由美
建築家の隈氏と都市開発ジャーナリストの清野氏による対談形式で、現在の東京各都市を分析していく。
登場するスポットは、「汐留」「丸の内」「六本木ヒルズ」「代官山」「町田」の5つだ。
隈氏の主観が目立つが、建築家による都市の考察は新鮮で非常に興味深い。
「汐留」は人工的な街になり都市づくりとして失敗だとしている。
原因の一つは、国や都による計画がきちんとなされず、土地が各企業に分譲され、それぞれ異なる建築家やゼネコンに発注したからだという。
確かに他の都市開発に比べ統一感も遊び的な空間も無く無機質さを感じる。
東京都の担当部署が、建設局の区画整理事業課(「丸の内」は都政整備局の都市づくり政策部)であることからも、「汐留」が都市計画されていない事がうかがえる。
だから汐留のビル群が海風を遮り東京の温暖化に悪影響を与えていると揶揄されてしまうのかもしれない。
「丸の内」では、一時期話題になった丸ビル群建設時の容積率譲渡についても触れている。
東京駅は風情を残すため低層のままにし、使っていない空中権を周囲のディベロッパーに譲渡し収入を得た。
ディベロッパー側は通常の規制から容積率を上乗せしビルを高層化できた事で、収益率を上げる事ができた。
このような企業と行政によるバーター取引を最初に実施したのが「丸の内」だという。
このような企業と行政によるバーター取引を最初に実施したのが「丸の内」だという。
なお「六本木ヒルズ」についても、行政側が実現できなかった環状三号線の交差点整備を森ビル側が行う事で、森タワーの容積率を上乗せするというバーター取引が行われたそうだ。
「代官山」で驚いたのは、旧山手通りに並ぶヒルサイドテラスは、古くからの大地主朝倉家が建築家と協業し、自身の土地を30年以上に渡って開発してきたということ。
行政とディベロッパーの思惑が絡む「汐留」「丸の内」、資金を様々な所から調達し土地を買い上げ街を変貌させた「六本木ヒルズ」とは大きく異なる。
ちなみに、代官山アドレス建設前にあった同潤会アパートが、関東大震災の被害者救援機関として設置された震災復興住宅と言うのを本書で初めて知った。
そして本書で最も目を惹いたのは、「町田」が都市として非常に面白いと言う事。
得てしてJRと私鉄が交差する駅はリアルとファンタジーが混在して面白い都市が醸成される場合が多いらしいのだが、町田は最たる例のようだ。
得てしてJRと私鉄が交差する駅はリアルとファンタジーが混在して面白い都市が醸成される場合が多いらしいのだが、町田は最たる例のようだ。
ベッドタウンとされる住宅地としての一面、駅前に乱立する量販店などの商業エリアとしての一面、近隣に大学が多く学生街としての一面、老舗商店が生き続ける商店街としての一面、ラブホテルや客引きの外国人など風俗的な一面など、あらゆる都市の顔が混在しているユニークな街となっているのだ。
あまり馴染みが無かったのだが、見る目が大きく変わり関心が高まった。
著者は、再開発される日本の都市が面白くないのは、クライアントと建築家が向き合わないからだとしている。
日本の場合、開発規模が大きいとクライアントも建築家も責任を負えないため、間にゼネコンを挟むことでリスクを回避している。
それは、建築家は安心して仕事でき、ゼネコンが世界トップレベルの技術で施行するというメリットがある反面、クリエイティビティ性が欠けてしまうようだ。
日本の場合、開発規模が大きいとクライアントも建築家も責任を負えないため、間にゼネコンを挟むことでリスクを回避している。
それは、建築家は安心して仕事でき、ゼネコンが世界トップレベルの技術で施行するというメリットがある反面、クリエイティビティ性が欠けてしまうようだ。
このような都市の比較や開発の裏側をプロの目による考察でのぞけるのは、なかなか楽しかった。
東京の都市に興味のある方は一読してみてはいかがだろうか。
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