2010年2月27日土曜日

【BOOK REVIEW】法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる

法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる (著)奥村佳史



税理士による法人税解説本。

会計に関する新書はよく目にするが、法人税の解説はあまりないのではないだろうか。
一般的に話題になる交際費や、益金損金における算入不算入、減価償却、役員給与、圧縮記帳など様々な項目に対して丁寧に解説しているだけでなく、実務と税法における食い違いなど著者自身の意見も都度挿入されており分かりやすい。

本書では、法人税が資金繰りを逼迫させることを繰り返し述べている。
それは会計上の収益費用と税務上の益金損金は異なるからだ。

例えば固定資産の取得は手元資金は減るが減価消却分しか損金は計上されないので、目先の課税負担は大きい。
ゆえに法人税を支払う際に資金が足りなければ金融機関から借りることも多く、数年間に渡り損金計上できる仕組みがあっても、支払利息などを考えると資金繰りは苦しい。

また現在のように、不況で不動産や株などの資産評価が下がり、減損損失で決算書は赤字になったとしても損失分は損金に含まれないため、法人税は徴収されるので多くの会社は苦しんでいるだろう。
手元資金に変化はないので当然ではあるが、会計と税務ではタイミングが異なるので、やり繰りを失敗すると痛い目にあう。

本書内で興味深い事例としては宗教法人について。
一般的に法人税で誤解が多いのは、宗教法人は無税と言う認識ではないだろうか。
しかし無税なのは賽銭やお布施といった収益を目的としない金銭の授受のみで、収益を目的とした事業や不動産賃貸などについては当然課税される。
例えば、おみくじやお守りの販売は寄付金とみなされ無税だが、線香やろうそくの販売は事業になるので法人税が課税されるそうだ。

本書では、通して基礎的な事が書かれているので、税務に疎くてもすらすら読めるだろう。
法人税は、金融関係者や企業の経理担当者位しか係る事は無いだろうが、専門知識は無くとも、自身の会社のキャッシュフローや税務に関しては気にしたいところ。


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