希望を捨てる勇気 (著)池田信夫
経済学者でアルファブロガー(池田信夫blog)の池田氏が現在の経済情勢に警鐘を鳴らした本。
資本主義経済に反する政策や企業の姿勢などを挙げながら、停滞している経済を解説している。
例えば、現在の雇用規制は賃金コストを抑制したい経営者と、解雇を減らしたい正社員の既得権益を守るための制度であるという。
組合側も自分達がクビを切られたくないから、新卒を減らし低賃金でいつでもクビの切れる非正社員を調整弁としているのだ。
事実、解雇しやすい方が雇用が増えるため、世界の中では解雇規制の弱い柔軟な国の方が失業率は低くなっているそうだ。
また、民主党が提案している派遣労働を禁止する法案について大きな疑問を投げかけている。
企業は慈善事業で雇用しているわけではないため、不況の中46万人と言われる製造業の派遣労働者を禁止しても正社員に登用されるのは5%程度だと言う。
興味深いのは、派遣労働者の労働組合である人材サービスゼネラルユニオンも派遣労働の規制強化に反対している事。
そして下記のように訴えている。
『私たちは、マスコミや一部の労働界、政党から出されている、派遣イコール「ワーキングプア」、派遣イコール「不本意な働き方」という見方には強く違和感を覚えます。組合員の話しを聞き、さらに厚生労働省の調査結果をみると、こうした見方が一方的である事が浮かび上がってきます。職業選択の自由の下、間接雇用も直接雇用も同等に「労働」であることの評価がされるべきです。』
実は、規制は正社員と派遣労働者を差別しているということが分かる。
日本の場合、終身雇用文化が根付いたため、正社員で働くのが当然という保守的な風潮がまだ残っている。
だが本書で指摘しているように、問題は雇用機会が平等になっていないということだ。
だから解雇規制を撤廃したら格差が拡大するというのは逆で、労働市場が柔軟になり流動性が高まれば、新卒で就職できなかった人が一生を棒に振るような絶対的な格差は無くなりる可能性が高い。
本書は経済の一つの考え方を知るにも参考になる一冊である。
0 件のコメント:
コメントを投稿