現在提言されている食料危機の一つ一つについて、統計や事例を挙げながら「食料危機」という俗説を反論している本。
「人口増加」「気象問題」「食生活の変化」「農業システムの近代化」「農地面積の減少」など様々な視点で、世間で訴えられている事情とは異なることがわかる。
所々、著者個人の予測に頼りアンロジカルで説得力に欠ける部分もある。
しかし、プロパガンダとは言わないが、改めてマスメディアや政府が一方的に伝える内容に疑問を持つ事の大切さを教えてくれる。
少し前に話題になり今やメディアも報道しなくなったバイオマスエネルギーなどは顕著だろう。
一時期はエネルギー原料のトウモロコシが高騰し、一部の穀物農家がトウモロコシ畑に転作したことで、各国に食料危機の不安が募った。
ただフタを開けてみれば、石油高騰に対する牽制だったり、不動産株に危機を感じた投資家達のお金がコモディティに流入した影響だったり、アメリカ政府による休耕補助金削減の狙いだったり、裏には色々な企みが見え隠れする。
また、経済発展につれて農民は他産業に押され国内で相対的に貧しくなっていくため、各国とも農民に対する貧困対策を行う。
例えば所得補助や生産調整による農産物価格の下支えなどである。
特に日本の場合は、政治家の選挙票にも影響してくるので、かなり必死。
これがまた農家回帰説を助長しているのかもしれない。
実際、日本の単純な自給率では、米は90%を超え、野菜も80%近くをキープしているそうだ。
「カロリーベースでの自給率」という表現が曲者で、それが40%ということで食料危機をあおっているのであれば、だいぶひねくれた報道になっていると言わざるを得ない。
これも一部の政治家や官僚、マスメディアの画策なのだろうか。
そして我々日本人は、戦後の食糧難のイメージが強かったり、米農家の印象で水や日照に敏感だったりするせいで、様々な想像に惑わされているのかもしれない。
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