日本で行われた殺人事件を統計的に検証し、意外と知られていない刑事事件の内訳とその内容、殺人を犯した犯罪者の実刑までの道のりとその後、そして社会における殺人の様相を概観している。
殺人と聞くと、映画やドラマ、はたまたマスコミの影響か、「怨恨」「通り魔」「精神異常者」「暴力団の抗争」などが思い浮かぶ。
しかし統計的には、子殺しや親殺しなど家族がらみの場合が半数を超え、それらの人々による再犯の恐れは少ないのが実情である。
また外因による死者数(2003年)は、交通事故38,000人、自殺32,000人に比べ、他殺は705人であり、世界的に戦争も含めると平時において故意の犯罪による命の喪失は全体の1%に過ぎないという。
そして通り魔による殺人は1桁だが、虫や動物により亡くなった人は50人以上になる。
「殺人」という恐ろしい言葉とは裏腹に、いかに殺人による命の喪失は稀かということ、そして殺人者も更正余地のある人々がほとんどということが浮かび上がってくる。
また興味深かったのは、刑務所の収容数の問題から、窃盗犯は18万1千人(2004年)捕まっているが、その内13万9千人は逮捕もされず帰宅を許されているそうだ。
日本の刑務所は検察官送致された年間220万人のうち3万人あまりしか入れられないことから、受刑者は重罪者や更正の余地が少ない者など選りすぐりであることがうかがえる。
裁判員制度についても触れながら、日本における「殺人」の現実をまじまじと描いており、世間一般のイメージを払拭させられる。
一つの事実を知るためにも本書を読むことに価値はある。
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