日本の社会保障制度を分解して分かりやすく説明し、そこに潜んでいる実情やリスクから警鐘を打ち鳴らしている本である。
本書では、若者世代が支払う年金がそのまま高齢者に使用される現状の賦課方式だと、少子高齢化が進んでいる日本では破綻することが目に見えていると解説。
下図は、本文の図表を一部抜粋したもので、社会保障全体の世代別損得計算になっている。
各世代の平均的な寿命まで生きる人について、「生涯に受け取る給付費の総額(生涯受給額)」から「生涯に支払う保険料の総額(生涯保険料額)」を差し引いた金額が計算されている。
まさしく世代間不公平の実態が鮮明となっている。
なんと、1940年生まれと1990年生まれで約7,500万円もの差額があるのだから驚き。
私達の世代はハッキリ言って、年金を支払うだけ損していることになる。
そんな制度があって良いのだろうか。
しかも、既に国民年金保険よりも都市部の生活保護費が高いと言う逆転現象が発生していると言う。
これでは真面目に40年間年金を払うより、散財して老後に生活保護を受けた方が良いと言うことになり、モラルハザードが起きる要因になりえる。
昨日のニュースでは、公的年金の現行制度が前提とする「向こう約100年にわたり平均4.1%の利回りを確保」という積立金の運用利回りが、二年連続でマイナスになっていると報じている。
積立金の市場運用を始めた2001年度から2006年度末までに16兆円2千億円あった累積収益が、それ以降の損失で9割消し飛び、昨年末で1兆7千億円弱まで減ったとのこと。
ただでさえ少子高齢化が進む中で現行の制度が崩れかけているのに、厚生労働省は4.1%という到底不可能な運用を掲げ、現行の制度を今後100年間維持することに固執している。
また、人口比率の高い高齢者を大事にしなければ、選挙で勝てないから大きく動き出せない国会議員の気持ちも分からなくはないが、現実から逃れることはできないのだから、真剣に討論してもらいたいものだ。
詳しくは本書にて丁寧に説明されているので、是非ご一読を。
0 件のコメント:
コメントを投稿