著者はチェーンストア経営研究団体ペガサスクラブ主宰、日本チェーンストア協会初代事務局長など、日本の小売業形態を創ってきた重鎮。
アメリカを手本とすることをベースに、チェーンストアの歴史と意味、そして目指す方向性を示している。
日本の流通形態は、資源供給企業や製造業が川上で、川下の小売業や消費者に対してトップダウンするため、過剰供給や価格高騰、卸の複雑化や消費者ニーズを把握できないなど様々な弊害があるとしている。
本来はアメリカのように小売業が消費者ニーズやウォンツを把握し製造業へボトムアップすることが望ましいとまとめている。
興味深かったのは、問屋・卸売業の年間総売上高は392兆円にも関わらず、小売業の仕入高は推定68兆円程度と言うこと。
なんと日本の問屋・卸売業は2割程度しか小売業に販売しておらず、売上高の8割程度は製造業向けになっているのだ。
要するに一般的にイメージする「製造業→卸売業→小売業」の流通経路ではなく、「製造業→卸売業→製造業→卸売業→製造業・・・→小売業」というように、商品を作ったり加工したりパッケージしたり様々な工程を踏むごとに卸売業が間に入っていると言うこと。
確かにこれでは商品は消費者ニーズにも答えられないかもしれない。
幾つもの企業を経由することでコストだけが上がり、商品を世に出すことへの熱意や責任感は希薄化してしまう。
消費者側は適正な価格で商品を購入できず支出が膨らみ、労働者側は中間企業が多すぎるため低賃金となるといった
悪循環で日本国民は貧しくなってしまう。
以前、事故米の事件があった際に農林水産省が原因のある企業を突き止めようとしたが、流通経路が複雑すぎて、結局原因である企業が特定できなかったというのも、これで頷ける。
本書はマクロ視点で小売業の経営の在り方について書かれているので、経営者や研究者にとって非常に良書。
ただ現場のマーケティング担当には実践的な内容ではない。
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