2011年1月22日土曜日

【BOOK REVIEW】マキコミの技術

マキコミの技術 (著)コグレマサト いしたにまさき



著名ブロガーの二人が、企業事例を踏まえながら現在のソーシャルメディアマーケティングのあり方について解説した本。

TwitterやUstreamなどの登場でネットとリアル間の距離感が縮まり、マーケティングのキーワードが「クチコミ」から「マキコミ」へ変わったという。
そして「マキコミ」に大切なことは、「ギブ&ギブ」「一歩前に踏み出すこと」の積み重ねだとアドバイスしている。


クチコミを促したり見返りを求めるような行為に対して、ユーザーは敏感に感じ避ける傾向にある一方、相手からのフォローやコメントさらには「いいね」を待ち望んでいたりもする。
それがまさしく、「ギブ&ギブ」「一歩前に踏み出すこと」であり、これがウェブツールを利用して良好な関係をつくりだすための基本なのだろう。
これは日々ソーシャルメディアを利用していると非常に共感できる。

ただ企業マーケティングの場合、見返りを求めない「ギブ&ギブ」では難しい。
なぜなら反応を起こすためのギブを考えることが役目だからだ。
企業マーケティングを行う上で、ソーシャルメディアの活用は、集客(トラフィック)や販売もしくは顧客を広げることが一つの基準であり、PRやファンの可視化だけを狙いとしているとすればそれは自己満足の域かもしれない。

また最近はTwitterやFacebookなどソーシャルストリームに目がいきがちだが、著者はユーザーとのタッチポイントを増やす最良の方法は、ブログなどでコンテンツを蓄積していくことであると指摘している。
蓄積したブログのコンテンツは、パーマリンクによって常にアクセスが可能になる。
定期的にアクセスを得られるコンテンツは、公開していた時間の分だけ価値が増していく資産であり、一度公開したコンテンツは、将来に渡ってずっと自社のために働いて、ユーザーを連れてくることに貢献してくれるという。

そして、ソーシャルメディアはマスメディアやリアルに替わるものではなく、それらをつなげていくパイプのようなものだと考えるべきで、人と情報のながれる場所そのものがソーシャルメディアなので、そこだけでは結果が出ない。
だから、企業のシーシャルメディアに求められるのは、ネットでのノウハウだけではなく企業の総合力であるとまとめている。

現在ソーシャルストリームがもてはやされ、個人も企業がソーシャルメディアを積極的に活用すればする程ブログがおざなりになりがち。
これは企業にとってはリスクで、検索効果や記事やコンテンツによる深いコミュニケーションを低減させてしまう可能性があることに危機感を感じる。

また興味深いのは、ユーザー集団が「コミュニティ」から「クラスター」へ変化しているということ。
リアルでもネットでも、主催者やコアメンバーのような中心となる影響力の強い人がいて集会場のように形成されるのがコミュニティ。
一方クラスターは場や中心を持たず、特定の話題やテーマごとにできあがる集団で、流動的で常に離合集散を繰り返す。
コミュニティは人と人とのネットワークにおいて重要な役割を果たしてきたが、たしかに現在はリアルもネットもコミュニティの概念が薄まっている気がする。
例えばmixiのコミュニティでつながるよりも、facebookのファンページに参加する方が軽い感じで今っぽい。
企業マーケティングを行う側も、自社にとって反応のあるクラスターを発見することが必要不可欠だと言うのは新しい発見である。
ウェブの潮流としてクラスターへの変遷があるということは、企業も自社サイトで待ち構えているだけでなく、違う切り口でより多くのタッチポイントをウェブ内に設置していく必要があるということなのだろう。

今後のソーシャルメディアマーケティングで、本書に登場した「マキコミ」と「クラスター」というキーワードを念頭におけば、ある程度目指すところが見えてくる。
本書は、誰しも漠然と感じていることを理路整然としかも的確にまとめているところがすごい。
また著者が長年積み重ね実戦しているから説得力がある。
マーケティング本として有意義な一冊であり、企業のソーシャルメディアの運用の参考になる良書である。


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