2008年12月17日水曜日

CSRにおけるコーズと企業利益の両立①

先日の“エコプロダクツ2008”の話題の中で触れたが、ステークホルダーから求められている社会的責任の取り組み(CSR)は環境活動などを中心に大きく広がっており、テレビCMなどの企業広告においても多く見られるようになった。

これは、世界的な環境保全の流れが大きな要因だが、CSRが寄付活動や慈善活動などの広報的なフィランソロピー型から、マーケティング的な企業利益貢献型(ブランディングやコスト削減など)に変遷しているからでもある。

では、各企業がCSRにおいて支持する社会的コーズ(主張)は、果たして企業利益に貢献しているのだろうか。
企業は利益を生む事で永久的に存続していく事がミッションであるため、理論的には何の事業であれ企業利益に貢献していなければならない。
そこで、3回に渡りCSRにおけるコーズと企業利益の両立について考えてみることにする。

今回は本テーマの背景として現在のCSRの取り組み内容と問題意識について整理したい。
まず、CSRの取り組みはマーケティング学者のフィリップ・コトラー氏によると大きく6つに分類できる。

①コーズ・プロモーション
社会的な主張に対して意識と感心を高めること
事例)ザ・ボディショップ「化粧品による動物実験反対」、ジョンソン&ジョンソン「看護師不足解消のためのキャンペーン」など

②コーズ・リレーテッドマーケティング
製品の売上を通してされる社会貢献
事例)アメリカン・エキスプレス「クレジットカード手数料の一部を飢餓救済へ寄付」、エイボン「ピンクリボン製品の売上の一部を乳がん研究や患者へ寄付」

③ソーシャル・マーケティング
行動改革キャンペーンの支援
事例)ドール「フルーツと野菜の摂取促進」、タワーレコード「夏フェスでのリユース・リサイクル促進」

④コーポレート・フィランソロピー
コーズに対する直接的な寄付活動
事例)マイクロソフト「貧しい地域への資金とソフトウェアの提供」

⑤地域ボランティア
従業員自らの時間や能力の提供
事例)シェル「環境保護に向けた海岸清掃」、リーバイストラウス「HIV理解のための福祉サービスと教育ボランティア」

⑥社会的責任に基づく事業
コーズを支援するための自主的な事業活動と投資
事例)スターバックス「商品のフェアトレード化」、ドコモ「携帯電話回収によるリサイクル」

これら取り組みの主なメリットは下記の通り。
●売上や市場シェアの増加
●ブランドポジショニングの強化
●企業イメージや評判の向上
●従業員にとっての魅力度や労働意欲の向上、離職率の低下(=カスタマーサービスの向上)
●コストの削減
●投資家や金融アナリストに対するアピール力の強化

こうしてメリットを並べてみると、CSRは企業にとって様々な恩恵をもたらし、競合企業との差別化やブランドエクイティの向上に大きく貢献しているように思われる。
しかし実際は、胸を張ってコーズの達成が企業利益に貢献していると言い張る企業は少ない。
何故なら、取り組みが企業に与えるアウトカムの測定が難しく不透明だからだろう。

CSR活動のアウトカムが不透明だと、消費者や投資家のみならず、社内においても経営者や周囲の従業員が懐疑的になってしまう傾向がある。
これでは、継続して続けることで効果の現れるとされるCSRが、ステークホルダーから企業にとって不利益だと思われることで継続困難となってしまう可能性が高くなってしまう。
コーズと企業利益のジレンマである。

コーズと企業利益のジレンマを解消し両立を目指すためには、どうしたらよいのか。
その解決には、CSR活動のアウトカムの提示=“見える化”が必要になってくるはずだ。
次回はその点について検証してみたいと思う。


(参考資料)
【著】フィリップ・コトラー


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