2011年2月10日木曜日

グルーポンビジネスへの違和感

先日NHKの「追跡!A to Z」で「急拡大!激安”クーポンサイト”」としてグルーポンが特集された。
幾つかの事実を紹介するだけで考察まではされてはいなかったが、おせち問題だけ取り上げて騒いでいる民放とは異なり、きちんと取材しグルーポンの現状を知るには分かりやすい番組だった。

その中でグルーポン担当者がアイスクリーム店に営業しているシーンが放送された。
その時のやりとりはこうだ。

グルーポンの営業は、通常の販売価格430円のアイスクリームに対して、200円(53%OFF)のクーポンを700枚発行することを提案する。
その場合は収益は以下のとおりになる。
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売上:200円
原価:180円
利益:20円
手数料:80円
赤字:60円
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よって、700枚のクーポンを発行すると合計42,000円の赤字が発生する。
逆ざやなので、売れば売る程赤字になる仕組みだ。

ためらう店長に対して営業担当者は、広告としての効果を強調する。
以前30,000円分のチラシで20人の来店者だったが、グルーポンだと42,000円で700人が確実に来店する。
広告費として考えれば安くチラシよりは効果的だと説明。

そして店員は「なるほど。お客さんが絶対来てくれるわけですよね」と頷き、一時的に赤字になっても一度来たお客さんがリピーターになってくれれば、いずれはプラスになると判断し商談がまとまった。

さて、この仕組みに対し違和感を感じるのは私だけだろうか。

たしかに宣伝費と考えると安いが、果たしてその視点だけで展開しても大丈夫なのだろうか。
販売価格を下げること、割引の大きさ、そして割引目当の来店者層などを考慮する必要はないのだろうか。

まず考えなければいけないのは、販売価格を下げるということは商品価値も下がるということ。
直接的な値引きをするとその金額がその商品の対価になってしまい、元の販売価格が高いと思われてしまう可能性がある。
購入者に対して特典を付与する場合でさえも、一時期の飲料メーカーのように、オンパックのような特典が無いと売れない、店舗でフェイスがとれないという悪循環に陥ってしまうことがある。

もちろん自信のある商品であれば、まずは体感体験してもらいたいと思うのは当然だ。
商品の質が良ければ、そこからクチコミで広がる可能性がある。
その手法として試食や割引もあるが、その際の割引の大きさも慎重になる必要がある。
客は逆ざやで販売しているとは思わないわけだから、大きな割引をすると「そもそもの原価って低いんだ」と商品価値を低く見られてしまう可能性がある。
また一度クーポンにより半額で食べたら、同じ店で倍以上の費用を払ってリピートするとは考えづらい。
広告視点で大きな割引率にインパクトをもたせるのも良いが、その際に割引率による人の心理効果も加味しなければならないだろう。

例えばレストランで、10,000円のコースがグルーポンで5,000円になったとする。
5,000から半分の2,500円がグルーポンの手数料とするとレストランが受け取れる金額は2,500円だ。
これで、10,000のコースだと信じて来る客に相当の料理が出せるだろうか。
そこで5,000円程度の料理を出せば、客からはクレームになりネガティブなクチコミが誘発される。
7,500円の赤字覚悟で振る舞ったとしても、次回リピーターとして定価の10,000円を払ってくれる可能性や、7,500円分のクチコミ効果はあるものなのだろうか。
多くの店舗では難しいように思う。

やはり、マーケティングとしてPriceとPromotionはそれぞれ別の力が働くので、分けて考える必要があるのではないだろうか。
リピーターを狙うのであれば、ポイントシステムや、DMなどでの案内、記念日による特典など、価格とは別の付加価値を持たせるべき。
クチコミを狙うのであれば、ソーシャルメディアを利用した方法など考えられるはずだ。

ただ、グルーポンビジネスが悪いわけではない。
閑散時の集客として活用したり、適度な割引でファーストコンタクトを狙うことも良いと思う。
商品の質が高い場合には、ポジティブなクチコミを誘発するきっかけにもなる。

ただ、クーポン客用の商品を提供したりするとおせち問題のようになってしまうし、予約時にクーポンを使用する旨を伝えなければいけない場合、それはクーポン用の商品があることを暗示しているわけで、詐欺にも思われてしまうので注意が必要だ。
グルーポンというツールを巧く活用するためにも、きちんとリテラシーをもつことが大切だろう。


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