2010年10月11日月曜日

【BOOK REVIEW】自己破産の現場

自己破産の現場 (著)岡崎昴裕



大手信販会社で債権管理・回収業畑を歩んできた著者が、自身の体験談を踏まえながら、債務者の実情、債権者である信販会社や消費者金融の裏側をレポートしながら、自己破産の現場を伝えている。

バブルのツケか、平成4年頃から自己破産件数は飛躍的に伸びている。
平成15年の約24万件をピークに減ってはいるが、平成11年から20年までの10年間だけで170万件を超え、74人に1人の割合で自己破産に陥っているという。
そして、借金問題に苦しんでいる人や破産状態に陥っている人は多く、その数は全国で150万人ともいわれているそうだ。


上図の相関関係を見ると、自殺者のほとんどは経済・生活苦を原因としていることが分かる。
これが経済大国と言われた日本で起こっている真実なのだ。

その裏で信販会社や消費者金融は、自己破産されると債権が回収できなくなるわけだから必死だ。
ゴールデンタイムにCM攻勢している消費者金融も、債権回収に大変な苦労をしている。
債務者と債権者は敵対同士だが、どちらも大きな事情を抱えていることがうかがえる。

ちなみに知らなかったのだが、自己破産は支払い能力がないことを裁判所に認めてもらっただけで、背負っている債務が帳消しになるわけではないらしい。
個人破産者の急激な増加に伴い、裁判所も容易に免責を許可しなくなったそうだ。
しかも自己破産にも数十万円の費用がかかるというのだから本当に追いつめられる。

また、非弁提携弁護士という整理屋と結託し債務者を食い物にする悪徳弁護士が、関東圏でも100〜200人いるというから驚きだ。
債務者が整理屋に相談すると弁護士の紹介をされるのだが、弁護士は名前貸しして斡旋手数料を取るだけで、何もしないらしい。
たまに街頭や交通広告で、整理屋と弁護士と消費者金融の広告が並んでいるのを見るが、異様である。

クレジットカードを持ち個々人が簡単に借金し、先行きも分からないのに35年のローンを組んでしまう今、自己破産とは隣り合わせであることは間違いない。
だからこそ、中高生から金融リテラシーを身につける教育は必須であると感じる。


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