2010年5月9日日曜日

【BOOK REVIEW】電子書籍の衝撃

電子書籍の衝撃 (著)佐々木俊尚



本は電子化され出版文化はどのような方向に進んでいくだろうか。

本書はiPadのリリースと同タイミングに刊行され、既に本格的に電子化されている音楽業界を事例に出しながら、電子書籍の未来をうらなっている。

一部では活字離れが進んでいると言われているが、文部科学省や全国学校図書館協議会などの統計によると、学生の図書館利用数や読んでいる冊数は以前よりも増えていると言う。
またブログやSNSなどインターネット上の情報を読む事も含めると、現代の若者は活字に親和性の高い世代だと指摘している。
これは電子書籍ニーズのポテンシャルがあることも示唆している。

また、出版流通のビジネスモデルも崩壊しつつあることが分かる。
日本では取次や書店に委託して本が販売されているため、売れ残りが出版社に返本されると、返本分の返金を相殺するため、紙幣代わりに新たに本を刷るという。
これは、「本が売れない」「返本が増える」「取次に返金しなければならない」「本をとにかく出し続けて返金で赤字にならないようにする」「ますます刷る」「ますます売れない(返本が増える)」と自転車操業の負のスパイラルが延々と続けられているということ。
近年、新書をはじめとする簡易な本の出版点数が増え続けているのは、出版社のキャッシュフローの苦しさが顕在化しているとも言える。

インターネットという時代の潮流がありつつも、やはり電子書籍に移行するための伏線は至る所にあることを実感する。
日本では著作権や出版流通のしがらみもあり、すぐに電子化されるとは考えづらいが、音楽ビジネスではiTunesの開始からたった数年でデジタル配信がスタンダードになった。
今月28日にソフトバンクから発売されるiPadの売れ行きが気になるところ。

ちなみに、著者佐々木氏が5月13日にソフトバンクの孫氏と対談することになり、その模様が20時からUstreamで生中継される事になっている。
こちらも気になる。

正義 VS 佐々木俊尚 「光の道」Ust 討論会 が決まっていく様子
http://togetter.com/li/17578


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