アカデミー賞受賞作品「ザ・コーヴ」による波紋

日本のイルカ漁を批判した米映画「ザ・コーヴ」がアカデミー賞にて長編ドキュメンタリー賞を受賞したことで、日本で行われているイルカ漁について波紋が広がっている。

イルカの可愛らしさと見た目の残酷さゆえ、映像だけを見ると感情移入してしまい、動物愛護のスタンスにも身を置きたくもなる。
これらイルカ漁は果たして悪なのだろうか。

私自身、日本でイルカ漁が行われている事実を今回初めて知り驚いた。
このイルカ漁は、密猟ではなく漁業法などに基づき国から許可されており、この土地の昔ながらの文化・価値観として根付いている。
だから、漁獲されたイルカの肉は地元の魚屋やスーパーマーケットなどで日常的に販売もされている。
また、イルカ漁では年間の漁獲頭数は決められているため、漁獲量ではなく頭数管理をしており、漁獲したイルカについては全てDNA登録を義務付けられているという。
捕獲されたイルカは、世界各地の水族館への輸出分と最低限の食用分以外は海に返されるそうだ。
要するに、象牙やヒョウ皮で一儲けするための密猟や乱獲とは全く異なるという理解が必要だ。

また背景として、島国の日本は古くよりあらゆる海産物を食料や燃料にしてきたことも考慮するべきだろう。
動物肉を食べない国、逆に鳩や犬を食べる国があるように、宗教や文化、歴史により食が違うのは当然だ。

「ザ・コーヴ」の論点は動物愛護ではなく、水銀を多量に含むイルカの肉がふつうにスーパーで売られていることへの警鐘としているが、様々なニュース記事によると動物愛護に傾倒していると言われている。
人はどうしても影響を受けやすく情に流されやすいので、きちんと本質を見抜かなければいけない。
そのためにも、今回の波紋は、日本人が日本の知らない文化を知る良い機会なのかもしれない。

ちなみに本映画の制作者達は、飼料動物とされている牛、豚、羊、鳥についてはどう思っているのだろうか。
記者会見の際に、「イルカがかわいそうなら、あなたは他の魚も食べないのか」との欧米プレスの質問に「食べない時期もあったが、それでは体に元気が出ないので今は食べている」と答えたそうだ。
これには肩の力が抜ける。

下記は映画「いのちの食べ方」の宣材と一部内容である。
希少動物の保護の観点は必要だが、これらの動物が平気でイルカやクジラは駄目と言う線引きも良く分からない。