2010年2月10日水曜日

Ustreamが抱える著作権問題とその裏にあるポテンシャル

先日のエントリーで、エグゼクティブプロデューサーにYOSHIKIが就任している事に触れたUstreamは、今後iPhoneやtwitterと併せて大きな広がりが期待される。

しかしそのユーザービリティとは裏腹に、音や映像に関する権利については、十分な配慮が必要になってくる。

元々Ustreamは2008年のアメリカ合衆国大統領選挙で候補者達が双方向ディベートをストリーミングしたのがブレイクの始まりらしい。
確かにPCカメラによる生中継チャット、授業や講演など発信型の映像については親和性が高いと思われる。
現に、先日のソフトバンクの決算会見やシンポジウムは大成功だった。

ただこれらの中継で配慮しなければならないのが、来場者の肖像権だ。
クローズドスペースで行う場合には、事前に周知し同意も得やすい上、映り込むのは主に来場者の背面であるのでほとんどの人は気にしないだろう。
一方公共の場では写り込みの人や物に確認をとるのは困難なため、通行者、特定企業や団体ロゴの映り込みなどは極力避けるべきだ。
しかし肖像権はプライバシーの侵害やその人を毀損するような行為、または映像を営利目的に使用しなければ大きな問題にはなりにくいため、運営面で厚い壁は無いと思われる。

しかし、最近流行っているDJプレイなどの「音楽」中継については、複雑な権利ビジネスが絡み合うため、法に抵触する可能性が高い。
音楽の著作権においては、権利管理団体であるJASRACが保有している場合がほとんどなので、演奏やBGM活用の際はJASRACに申請し費用を支払えば基本的には問題無い。
ライブハウスやクラブでの演奏なども、会場がJASRAC申請しており、入場費の有無に応じて費用を支払っているはずである。

しかし、編曲の権利は音楽出版社、公衆送信権は著作(作詞や作曲)者、レコード原盤の複製や送信可能化権については製作(レーベル)者が権利を持っており、該当する場合には各々の許諾が必要になる。
よって音楽をインターネットで送信する場合には、公衆送信権を各著作者に、送信可能化権を製作(レーベル)者に、許諾を得ることが必要となる。

JASRACのQ&Aを確認すると、映像(動画)コンテンツに音楽を用いストリーム形式で配信する場合の説明は下記の通りである。

■第三者が製作した音源を利用している
市販のCDや放送番組などを音源として、ネットワーク上でご利用になる場合は、JASRACが管理する作詞者・作曲 者・音楽出版社の著作権のほかに、レコード製作者・実演家(アーティスト)・放送事業者の権利である「著作隣接権」 の許諾を得なければなりません。著作隣接権については、ご利用になる音源ごとに、それぞれの権利者に直接許諾を得ていただく必要があります。

このように、Ustreamでの「音楽」中継は非常にハードルが高いのである。

その中、先日渋谷のThe Roomで行われた沖野修也氏のDJが、1時間限定でUstreamで中継されてたようだ。
なんとこのDJプレイは、著作権管理団体に登録する前の楽曲のみを使っていたというから驚きだ。
きっと沖野氏の知り合いなどの楽曲で、各権利者に対しては全て許諾を得ていたのだろう。
これは先鋭的な試みである。



機材の発達により音源制作者は増加し、
MyspaceのMusicBankのように、その音源を有効活用するような動きも最近顕著になってきている。
またアマチュアの音源制作者はそれ自体を商売にするのではなく、多くの人に聴いてもらうことを期待している場合も多く、公正な利用には許諾のいらないフェアユース化する傾向にある。
これらロングテールの尻尾にあたる音源達がフェアユース化され、フリーライセンスの下インターネットで配信されていけば、それこそ音楽の費用的な価値観は大きく変わる可能性がある。
またアルファブロガーのような「アルファコンポーザー」や「アルファDJ」と言われる人達が出現し、そこで新曲をプレイスメントしてプロモーションを図るビジネスなども産まれてくるかもしれない。
権利ビジネスの裏側では、権利に拘束されない音源とインターネットが、新しい音楽市場を創造していくポテンシャルを感じずにはいられない。






0 件のコメント: