2015年8月21日金曜日

【BOOK MEMO】ザ・プラットフォーム

ザ・プラットフォーム (著)尾原和啓


6〜7年前にAppleが「iTunes」「iTunes Store」「appleTV」でプラットフォーム化を始めたり、地デジの開始やスマートフォンの広がりでインターネットと生活が密接になったこともあり「プラットフォーム」という言葉は本屋などでもよく見かけたが、最近また改めて話題になる事が多い。

ITにおける「プラットフォーム」の意味合いとして、以前はリアルとネットをボーダレスにしタッチポイントを増やす事でユーザーを囲い込むことを目指していた印象だが、現在はソーシャルメディアなどユーザー参加型で形成される事が多いからかネット内においてユーザーを囲い込むことが目的になっているように感じる。
これもまた、ネットが「オープン」から「クローズド」へ時代が流れているからなのか。

特にメモとして残したいポイントを本書より抜粋。

“グーグルは検索エンジンの結果を、それおれ個人の履歴にもとづいて「パーソナライゼーション」しようとしました。ウェブページを見た履歴や、どんなキーワードで検索したかを分析しながら検索結果を出すことで、使う人にとってより便利で心地のいいものにしようとしたのです。パーソナライズをする方が、そのサービスをより長く使ってくれる傾向が高まるのです。 
しかし、そうした施策が必ずしもいいことだとはかぎりません。グーグルが私たちの気づかないあいだ、知らず知らずのうちに検索結果をパーソナライズして表示しているとしたら、私たちは新しい情報に触れる機会を失ってしまいます。さらには、自分にとって都合のよい結果だけが表示される事で、自分が今抱いている世界観をより強固にするばかりで、自己批判する事ができなくなってしまいます。”

“海外のECサイトのように、商品のスペックだけを記した簡素なページにしてしまうと、そこで人気になる商品は「最安値」や「納期最短」だけになってしまいます。つまり、すでにほしい商品がはっきりとしている人が、単にわかりやすく得しそうな商品を買うだけの場になってしまうのです。 
それに対して、楽天の店舗ページのデザインは、各店舗が試行錯誤のなかでたどり着いたものです。個別ページの編集権を楽天が店舗にゆずりわたすことで、さまざまな試行錯誤が生まれたのです。それはロングテールとして存在する個性豊かな店舗たちが、一見してわかりづらいけれども個性的で魅力あふれた商品を売りたいと考え、そこで店舗と客の間に生まれる濃い接客のライブ感を大事にしたいと考えた結果として、生まれたものです。だからこそ、楽天の店舗ページは長くならざるを得ません。その商品が生まれたストーリーや店舗の思いが、ロングページで上から下へと語られていくのです。 
これこそがユーザーが心の中に物語を生み出す「商品を買いたくなるインターフェイス」なのです。言い換えれば、楽天は目的を持ってすぐに買い物を終わらせたい「検索買い」ではなく、迷う事も楽しむウィンドウショッピングのような「探索買い」なのです。 
こうした「探索買い」はスマートフォンの時代になればなるほど、増えていくだろうと私な考えております。「リーンバック(体を後ろに傾ける)」の時代になるほどインターネットへの向き合い方は受動的になり、ソファやベッドでだらだらと使うものになってきているのです。つまり「これを買う」という目的もなく「なにかほしいものがあったかな」と探索しながら買い物をするようになるのです。”

ソーシャルメディアでの活動は嗜好性の合うクラスタやコミュニティで形成される事が多くどうしても視野が狭くなりがち。また関連商品や関連動画などのレコメンド機能も目先のCTRやCVRを高める機能としては貢献するが、多様性を提供できずマーケットの拡張にはつながりづらい。
期待されていたキュレーションメディアにしても、ほとんどがYahoo!ニュースと同じで各メディアの記事を選別して提供しているだけで本当の意味でのキュレーション機能は果たされていないように思う。

楽天の話は興味深いですね。インターネットが普及する前から、自らのフィルターを通して新しい発見や気づきを提供してきたショップスタッフには一日の長があるので、そのノウハウをオウンドメディアで活かし付加価値を提供できれば「最安値」や「納期最短」の争いから抜け出せることも期待できそうです。


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